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薬局経営とは?DXなど未来の薬局経営のあり方について解説!

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薬剤師

薬局経営は、今変革の時代にきています。例えば厚生労働省は、薬局経営における対人業務の比率を高めることを推進しています。その背景には日本社会の高齢化があります。その結果、薬局や薬剤師の在り方も変わろうとしています。

特に重要となるのが、薬局のDX(デジタルトランスフォーメーション)です。具体的には、投薬チェックの自動化や情報通信技術の活用、オンライン服薬指導の推進などがあります。またデータのクラウド化や、電子処方箋ネットワークを活用した医療機関との連携もあります。

本記事では、薬局の経営者の方が少しでも経営のヒントに参考にして頂ければ幸いです。

 

Contents

1. 薬局経営の年収について

薬局経営者の平均年収

薬局経営者の年収は、薬局が置かれているステージによっても大きく変わってきます。それぞれの年収レベルについて、解説します。

1-1. 薬局経営者の1店舗の年収

薬局経営者の1店舗の年収は、立地と連動する処方箋の枚数に大きく左右されます。つまり、近くに大きな医療機関があり、高齢者が多いエリアが非常に有利です。そして近隣の薬局にサービス力で勝つためには、医療機関との連携だけでなく、在宅対応やオンライン服薬指導も大切です。

また健康サポート機能の強化など、患者さんが立ち寄りやすい相談業務もより重要になっています。以下は、薬局経営の年収別に解説します。

1-2. 年収400万円以下の場合

法人を立ち上げ、開局して間もない時期の薬局経営者がこのケースに当てはまります。例えば1日の処方箋が20枚以下で、月の技術料が100万円以下というパターンです。また政策金融公庫への返済が毎月ある場合も、このステージに多いのが特徴です。

1-3. 年収500万円~600万円の場合

独立して薬局を開局し、間もない時期の経営者の年収です。この年収は、ドラッグストアや調剤薬局に勤務する管理薬剤師の同程度になります。

例えば月収に換算すると、約40万円~50万円です。経営者の場合は役員報酬になるので、ボーナスはありません。また1人薬剤師として運営するのか、人を雇用するのかにもよりますが、月の技術料が100万円前後というのが目安です。

1-4. 年収600万円~800万円の場合

このレベルの年収は、中小企業の薬局で働く管理職サラリーマンや個人経営の管理薬剤師と同程度です。例えば薬局経営で1人薬剤師の場合、月の技術料は150万円前後が必要になります。またステージでは、人件費がかかります。

1-5. 年収800万円~1000万円の場合

この年収レベルは、サラリーマンでは製薬会社か大手ドラッグストアチェーンの管理職でないと難しいでしょう。例えば年収800万円~1000万円の場合、月の技術料が200万円前後の店舗を、薬剤師1人とパートで運営するイメージです。また処方箋の枚数も、月800枚が目安になります。

1-6. 年収1000万円~2000万円の場合

薬局経営者として年収1000万円~2000万円の場合は、かなり成功の部類に入るでしょう。具体的には、月の技術料が200万円~300万円の店舗を複数運営するイメージです。またかなり多くの処方箋枚数をこなしたり、薬剤師を複数名雇用し、マネジメントする必要があります。

このクラスになると、法人化によって経費にできる幅を広げたり、消費税を2年間免除になる措置を受けたりします。また法人化による信用力のアップで、採用活動もスムーズになります。

 

2. 1店舗の薬局経営者が2店舗に増やすには

薬局経営 1店舗

「独立開業して、1店舗目はようやく軌道に乗ってきた。2店舗に増やすにはどうすればいい?」と悩む方は多いでしょう。ここでは、とるべき行動について解説します。

2-1. 新しい薬局を開業する

厚生労働省の調査によれば、1店舗の薬局経営の損益差額は1.2%です。一方、2~5店舗で2.0%、6~19店舗では7.2%になります。つまり、薬局経営で利益を出すためには、店舗数がとても重要な要素になります。

そこで新規で薬局を開業する場合ですが、売上がどれぐらい見込めるのかがポイントです。近隣に医療機関はあるのか、高齢者は住んでいるのか、競合薬局との立地関係など、様々な要因があります。更に新規で薬剤師を採用する必要もあります。

また資金も必要です。新規で薬局を開業するためには、一般的に1,000~2,000万円必要といわれています。特に注意すべきは、開業時の赤字です。損益分岐がプラスに転じるまでの期間は、余裕をみておきましょう。

2-2. 既存の薬局をM&Aで買収する

M&Aで既存の薬局を買収する場合、既に経営データはあるので、売上見込みが立てやすいのが大きな特徴です。ただし買収費用として、3,000万円以上必要となるケースもあるので、資金準備が必要です。

また買収する薬局に、お店を任せられるスタッフがいるのかどうかを必ず事前に把握しておきましょう。そういったスタッフがいるかいないかで、経営が軌道に乗るスピードが大きく変わってきます。

 

3. 薬剤師じゃない薬局経営について

薬剤師じゃない薬局経営

3-1. 薬剤師以外でも薬局を開業できる

薬局の開設者については、「薬局の開設者は薬剤師であることが望ましい」とされています。しかし、必ず薬剤師でなければならないとは規定されていません。つまり、薬局は薬剤師以外の人で開設することができます。

3-2. 薬剤師と経営は切り分けた方がいいという考え方

薬局は人の命にも関わるお薬を扱う場所だから、薬剤師が経営した方が良いという考え方があります。しかし、そもそも薬剤師は薬学を専門的に学び、難関の薬剤師国家試験を合格した人です。実家が薬局を経営している方以外は、人生の中で経営を学んだ経験がない方がほとんどでしょう。

そういう意味では、薬局の経営と、医薬品の販売や調剤、服薬指導などのオペレーションを切り分けた方が合理的かもしれません。例えば地方の調剤薬局などは、まだ薬剤師出身のオーナーが珍しくありません。ただ市場環境が厳しくなっていく中、営業や交渉、採用にも詳しい薬局経営のプロの比率が高まっていくという指摘もあります。

 

4. 薬局の開業について

薬局開業の資金や手続き

4-1. 薬局開設許可と保険薬局指定

薬局を開業するためには、「薬局開設許可申請書」を地域の保健所に提出する必要があります。同時に、平面図などの添付書類も必要です。また調剤薬局を開業する場合は、「厚生労働大臣の保険薬局指定」が必要になります。詳細については、都道府県を管轄する地方厚生局に確認しておきましょう。

4-2. 薬局開業に薬剤師資格は不要

薬局の経営者になるだけなら、薬剤師の資格は不要です。処方箋を扱う保険薬局も、同様です。ただし調剤薬局の運営においては、調剤するスタッフは、薬剤師の資格を保有している必要があります。

4-3. ドラッグストアと調剤薬局

薬局には、2種類あります。ドラッグストアと呼ばれる「店舗販売型薬局」と、薬剤師が調剤する「調剤薬局」です。最近では、ドラッグストア内に調剤薬局が併設されている店舗も増えてきています。

薬局を開設する場合、地域の市場規模や競合のタイプを分析し、どのタイプを出店するのか決める必要があります。

4-4. 薬局開業資金の内訳

これから薬局の開業を検討されている方は、必要な開業資金の内訳とポイントを把握しておきましょう。

薬局開業に必要な資金の内訳とポイント
① 店舗取得費/テナントを借りる場合は、賃貸費用だけでなく、保証金も必要
② 内装費/受付の位置、待合室、6.6㎡以上必要な調剤室など
③ 外装費/一目で薬局とわかる目立つ看板、扱う商品が外からわかるデザインなど
④ 医薬品購入費/仕入れ値を下げるための医薬品の共同購入、大手チェーン薬局との競争を意識する
⑤ 人件費/調剤助手やパートの活用など、コスト削減を推進

 

5. 薬局経営は儲かる?成功のポイントとは

薬局経営 儲かる

では、儲かる薬局にするためにはどうすればいいのでしょうか。ポイントを、以下に解説します。

5-1. かかりつけ薬局として患者さんの“マイ薬局”になる

患者さんにとって、自分の体質や過去の病歴を把握してくれているかかりつけ薬局は頼れる存在です。例えば、少しでも体調が悪くなったり、かつての持病が再発した時にでもすぐに相談できます。

かかりつけ薬局として運営するためには、かかりつけ薬剤師としての要件を満たす「保険薬剤師」を設置する必要があります。そうすることで、「薬剤師指導料」と「薬剤師包括管理料」を算定することができます。

5-2. 地域密着型薬局として収益力を高める

薬局経営の成功パターンの一つに、「地域密着型経営」があります。例えば、「薬局内でのイベント開催」「薬局外での地域ケア会議の実施」「地域住民への講演」といった取り組みを行うことで、地域住民の方との連携を深めることができます。

今後はオンライン診療が重要になりますが、やはりリアルな対面は人間関係の基本です。地域の人間関係強化とIT活用によるシナジー効果で、経営力を高めることができます。

5-3. 食品や雑貨販売を薬局経営の新収益源に

2019年の薬価改定により、薬全体の60%以上の薬価が引き下げられました。そうした背景をもとに、調剤薬局では一般用医薬品だけでなく、食品や雑貨を販売し、収益源の多様化を推進する薬局が増えています。

薬局内の物販での重要ポイントは、「お店のコンセプト」や「患者さんのニーズ」に合わせた商品を用意することです。例えば、栄養素を補う「サプリメント」や免疫機能を向上できる「健康食品」です。具体的には、ビタミンCサプリや梅肉エキス、低カロリーのお菓子などがあります。

5-4. オーナー薬剤師で耳鼻咽喉科、皮膚科の医師と組む

耳鼻咽喉科と皮膚科の医薬品の特徴は、ストックが少なくて済むことです。特に皮膚科の場合、混合調剤の処方が多いと技術料が増えます。また混合調剤には、患者さんが競合他店に流れにくいというメリットもあります。

さらにパートナーとして組む医師と信頼関係を築くと、後発医薬品への変更を任せてくれることがあります。そこで薬価差益の大きな後発品を選択し、収益率を高めることができます。

 

6. 薬局経営の成功事例紹介

薬局経営 成功事例

6-1. ITを活用し、商品動向や待ち時間短縮も

A薬局では、レセプトコンピューターと連動したPOSシステムを導入しました。そうすることで、会計管理だけでなく、患者さんの薬歴管理と服薬指導の一元管理が可能になりました。また地域における売れ筋商品の把握も容易になりました。

また多くの人が使っているLINEの公式アカウントを開設し、「処方箋受付」や「お薬の相談」などのオンライン化を推進しました。そうすることでお客様の待ち時間が大幅に短縮できただけでなく、スタッフも仕事の効率化が図れました。

スタッフの中には現在育児中の薬剤師がいましたが、無理なく働けるようになりました。またアルバイトのマネジメントもより効率的になり、人件費の削減も実現しました。

薬局経営 IT活用

6-2. 厳選商品を充実させて相談も積極的に

B薬局は、現在1つの駅周辺に5店舗展開し、地域シェアは30%を超えています。調剤、在宅訪問だけでなく日用品の充実や、地域の方に参加して頂けるイベントも開催しています。また、PCやスマートフォンなどのデジタルテクノロジーを取り入れるICT化(Information Communication Technology)を推進しています。そうすることで、店舗間の情報共有が容易になりました。

大きな転換点は、3店舗目の出店以降です。採用業務なども増え、患者さんとのコミュニケーションの時間が取れなくなりました。そこで独自の強みを強化するため、専門家の評価が高い「こだわりの商品」の発掘を推進しました。日本薬局協励会に入り、優良医薬品について情報収集しました。また「人体の働きと医薬品」「主な一般用医薬品とその併用」などの研修も受けました。

高度な知識とクラウド上の情報共有、患者さんとの相談が、満足度を向上させました。その結果、コロナ禍にも関わらず、増収増益を実現しました。

6-3. 医薬品ネットワークでコスト削減

C薬局は、コスト削減が経営の重要テーマでした。その解決策として、4年前に医薬品ネットワークに加入しました。「在庫管理」や「不動在庫処理」、「卸会社ごとの医薬品購入や支払い業務」「後発品選定」を効率化するためです。

医薬品ネットワークは、「価格交渉」だけでなく、卸の取引先が多いことによる「豊富な商品ラインナップ」も魅力でした。流通改善が経営効率化につながった結果、より地域の患者さんと向き合える時間も増えました。

6-4. ITマーケティングで集客し新規顧客獲得に成功

薬局経営 WEB集客

病院のそばにある門前薬局は、医療機関で受診した患者さんが自動的に訪れます。D薬局はそういった立地ではなかったため、独自に新規顧客を集客する必要がありました。

そこで、Webマーケティング会社にホームページのリニューアルを依頼しました。ポイントは、大きく2つありました。まず「薬局+地域名」「病名+地域名」といったターゲットが検索しそうなキーワードを選定し、Googleでの上位表示を目指しました。

次に訴求力を強化するため、「かかりつけ薬局」としてのサービス強化です。独自商品や待ち時間の削減、Q&Aコンテンツなどを充実させました。

施策の結果、患者さんの来局数が大幅に増加し、収益力が大幅にアップしました。今後はLINEを活用した顧客管理を充実させ、オンライン相談も含めて、より患者さんとの距離を近づける予定です。

 

7. 薬局経営に役立つ本について

薬局経営に役立つ本

7-1. 成功する調剤薬局経営

この「成功する調剤薬局経営」は、「これから薬局経営を始めてみたい」「2軒目を手掛けたいが情報がない」という方におススメです。見出しには、「勝てる薬局・勝てない薬局」「ドクターとどう付き合うか」「スタッフとどう付き合うか」といった興味深い構成になっています。

また筆者は、サラリーマン時代に医薬品卸売業、調剤薬局チェーンで店舗開発業務を経験しています。その時培ったノウハウが、調剤薬局経営用に編集されています。

7-2. ロボット薬局

ロボット薬局」の表紙の帯には、「大手通販ネットショップの業界参入により薬局はかつてない淘汰の危機に直面する!」というフレーズがあります。またピッキング作業をロボットに任せて、薬剤師を対人業務に専念させるといった鋭い指摘もされています。

見出しには、「2021年の調剤薬局の倒産は過去最多」「DXで後れを取る薬局業界」「Amazon薬局という黒船」といった興味深い内容が盛り込まれています。

7-3. 保険薬局Q&A 令和4年版

この「保険薬局Q&A 令和4年版」は、書名の通り薬局業務のポイントをQ&A形式で解説してくれています。例えば「処方箋受付」や「後発医薬品」、「訪問薬剤管理指導」等の疑問が解消されます。

令和4年版には、「オンライン服薬指導の最新知識」や「事務スタッフの教育」なども掲載されています。

薬剤師の本でおすすめは?スキルアップできる人気の本をご紹介!』でも紹介していますので、是非参考にして下さい。

 

8. まとめ

薬局の経営は、大きな岐路に立たされています。日本は、世界でも稀な超高齢化社会を迎えています。その結果、患者さんも薬局経営者も高齢化問題を抱えています。

また政府の施策の方向性は、地域包括ケアシステムの一環として、かかりつけ薬局としての役割を求めています。そこには、新しい経営センスが求められます。

薬局としての価値を、どう創造していくのか。「集客力」「商品力」「価格競争力」「サービス力」「連携力」が重要です。大手ドラッグストアに負けない魅力を設計し、地域密着の強力なサービスをどう構築していくかが問われます。また、調剤薬局のM&Aも今度進みます。

患者さんの服薬歴と薬剤師のオペレーションが、ITで連動する必要があります。また他の医療機関との連携も同様です。

薬局の姿は、これから大きく変貌する可能性があります。しかし、変化は成長する大きなチャンスともいえます。幅広く情報を収集し、トライ&エラーをする勇気を持って行動できるかどうかが経営者に問われています。

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