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電子処方箋とは?薬局での導入の流れや薬局導入事例も解説します

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処方箋

電子処方箋は、薬局経営におけるDXの一丁目一番地です。例えば、お薬手帳は持参されない方もいます。しかしオンライン資格確認の活用で、リアルタイム情報が閲覧できるようになります。

また高齢者の患者さんは複数の疾患を持つ傾向があります。そして複数の医療機関を受診した時、他の医療機関と情報共有できるのが、電子処方箋のネットワークです。

本記事では、これからの薬局経営に必要不可欠な電子処方箋について解説します。

 

1. 電子処方箋とは

電子処方箋

電子処方箋の概要(引用:厚生労働省のホームページより)

1-1. 電子処方箋の仕組み

電子処方箋とは、医師が医薬品を処方するために「薬の種類」や「数量」「服用方法」を記載していた紙の処方箋を電子化したものです。これは、オンライン資格確認等システムがベースになっています。

上の図にあるように、まず患者さんが電子処方箋を選択し、マイナンバーカードや保険証などで本人確認をします。また医師や薬剤師が患者さんのお薬情報を参照することに、同意してもらいます。そうすることで、患者さんは過去3年分の複数の医療機関・薬局・歯科医院にまたがるお薬情報に基づいた医療を、受けれるようになります。電子処方箋管理サービスの運用は、オンライン資格確認等システムを基盤としています。

電子処方箋の運用ガイドラインは、厚生労働省から発表されています。ポイントとしては、「電子処方箋の運用の仕組み」「地域医療情報連携ネットワーク」「ネットワーク回線のセキュリティ」「認証体制」などがあります。

現状の電子処方箋管理サービスは、院外処方箋のみが対象です。患者さんの薬剤情報幅広く網羅するためには、お薬手帳アプリ等による院内処方時の薬剤情報等の情報登録が必要です。

厚生労働省の『そうだったのか、電子処方箋』では、わかりやすく解説されています。

1-2. 厚生労働省の電子処方箋対応薬局・医療機関リスト

電子処方箋は、令和5年(2023年)1月26日から体制が整った医療機関や歯科医院、薬局で利用できるようになりました。また厚生労働省は、電子処方箋対応の医療機関・薬局のリストを公開しています。

1-3. 電子処方箋はいつから

電子処方箋の義務化は、いつからなのでしょうか。2023年4月から、保険加入状況を確認する「オンライン資格確認等システムの導入」が原則義務化されました。そのことによって、より今後は電子処方箋の活用が進むと予想されます。

1-4. 電子処方箋のポータルサイトについて

2023年2月1日、『医療機関向け総合ポータルサイト』が開設されました。またよくある質問では、電子処方箋の運用に関わるポイントが解説されています。

例えば、「導入にあたっての補助金や費用について」では、以下の補助金申請の流れが説明されています。必要書類としては、「補助金交付申請書」「領収書(写)」「領収書内訳(写)」「事業完了報告書」があります。

電子処方箋の補助金交付申請の流れ

電子処方箋の補助金交付申請の流れ

1-5. 電子処方箋対応の薬局について

厚生労働省のホームページでは、電子処方箋対応の医療機関・薬局リストを公開しています。また切り替えに向けて、データのやり取り等の確認を行っている施設もあります。

また『Caloo(カルー)』では、電子処方箋対応の病院・クリニックを探すことができます。

1-6. 電子処方箋のモデル事業について

運用プロセスの検証や課題の整理を行うため、2022年10月から電子処方箋のモデル事業を4地域で実施しています。具体的には、山形県酒田地域、福島県須賀川地域、千葉県旭地域、広島県安佐地域です。

1-7. アメリカの電子処方箋事情

近年アメリカでは麻薬性鎮痛剤「オピオイド」が処方箋の不正入手で出回ることが、社会問題になりました。そこで麻薬取締局の要請もあり、2018年10月に規制薬物の乱用まん延を防ぐための法案が発効しました。

また2021年1月以降、規制薬物の処方に電子処方箋の使用が義務づけられました。しかも医師のログイン時に、パスワードだけではない多要素認証が定められました。これらの施策では、電子処方箋に対応しなければ該当薬物は販売できなくなったのです。

 

2. 電子処方箋導入のメリットとデメリット

電子処方箋導入のメリットとデメリット

2-1. 電子処方箋導入のメリット

2-1-1. 業務の負担が軽減される

電子処方箋は、医師と薬剤師双方がデータにアクセスできます。つまり医師が登録したデータを薬剤師が確認でき、薬剤師からのフィードバックを医師が確認できます。このように従来の疑義照会や患者さんへのヒアリングにかかっていた負担が、大幅に軽減できます。

2-1-2. 処方箋作成コストを削減できる

調剤済の処方箋と調剤録は、3年間の保管が義務づけられています。それらは電子処方箋に切り変えることで、処方箋の印刷代や保管スペースコストが軽減できます。

2-1-3. より安心できる医療サービスを提供できる

電子処方箋の大きな目的の一つは、情報の共有によるよりレベルの高い医療サービスの提供です。例えば、他院で処方されたお薬情報や副作用履歴なども調べることができます。

そうすることで、医薬品の重複投薬や副作用の発生を防ぐことができます。また患者さん自身もデータにアクセスできるので、ご自身の服薬管理が簡単になります。

2-1-4. 処方箋偽造防止効果がある

近年、処方箋を偽造・変造して向精神薬等の医薬品を不正入手する事件が問題になっています。しかし電子処方箋でれば、偽造や変造は不可能なので、各種医薬品の不正入手も防止できます。

2-2. 電子処方箋導入のデメリット

2-2-1. 電子処方箋システムの導入に時間とコストがかかる

電子処方箋システムの導入には、以下を準備する必要があります。そのために、ある程度の時間とコストはかかります。

電子処方箋導入において準備すべきもの
1  オンライン資格確認等システムの導入
2  顔認証付きカードリーダーの改修
3  医師/薬剤師資格証の申請(ICカード)
4  電子処方箋利用申請
5  ICカードリーダー及び専用ソフトウェア
6  電子処方箋管理ソフトウェア
7  電子処方箋セキュリティアセスメントの実施

2-2-2. 慣れるまでに時間がかかる

電子処方箋は、使用するパソコンが電子処方箋に対応していれば、これまでの画面や操作方法とほぼ変わらないといわれています。ただし、誰もがシステムもスムーズに使えるようになるには、ある程度の時間がかかることが想定されます。

2-2-3. サイバー攻撃のリスクがある

2022年10月、大阪府の某病院がサイバー攻撃を受けました。その結果、全ての電子カルテが使用できなくなり、外来診療も停止するなど、深刻な影響が出ました。こうした事態を防ぐためには、スタッフのサイバー攻撃に関する知識の向上や医療機関のセキュリティ対策が必要不可欠です。

 

3. 処方箋の電子化の流れとは

電子処方箋導入の流れ

3-1. 導入の準備

運用開始の約1~4ヶ月前を目安に、電子処方箋の導入の準備をします。またHPKIカードの発行申請をします。HPKIカードとは、医療分野の国家資格や管理者資格を証明するための電子認証機能があるカードです。

3-2. システム事業者へ発注

運用開始の約1ヶ月前までに、電子処方箋のシステム事業者へ発注をします。また、HPKIカード読取用のICカードリーダーを購入します。

3-3. 導入&運用の準備

実際の導入については、システム事業者の方で対応します。ただし、パソコンの設定や業務上の操作確認は、各医療機関や薬局で対応します。そして運用開始日が決まり次第、ポータルサイトで運用開始日の入力を行います。

運用の準備については、まず運用マニュアルや動画を参考に、患者さんの動線を含む業務フローや変更点の確認を行います。次に、患者さん向けの提示物を準備します。

3-4. 電子処方箋補助金の申請

導入完了後に、システム事業者から領収書等の必要書類を受領します。その後、電子処方箋のポータルサイトで補助金を申請します。薬局向けの補助金ですが、2023年(令和5年)までに導入を完了した場合、大型チェーン薬局は9.7万円を上限に補助されます。また大型チェーン薬局以外の薬局は、19.4万円を上限に補助されます。

 

4. 電子処方箋でマイナンバーカードを利用した流れ

電子処方箋 マイナンバーカードを利用した流れ

ここでは厚生労働省の薬局向け動画をもとに、患者さんがマイナンバーカードを利用し、電子処方箋を選択した一般的な業務の流れについて、解説します。

4-1. 受付

4-1-1. 患者さんの来訪

電子処方箋 受付

患者さんが、薬局の受付に来訪した場面です。

4-1-2. マイナンバーカードの使用

電子処方箋 受付

患者さんはマイナンバーカードを用いて、オンライン資格確認の仕組みを使います。

4-1-3. 顔認証付カードリーダーによる本人確認

電子処方箋 受付

顔認証付カードリーダーによって、患者さんの本人確認を行います。

4-1-4. 患者さんの同意

電子処方箋 受付

患者さんの本人確認後、顔認証付カードリーダー上に、過去のお薬情報の提供への同意を確認する画面が表示されます。そして患者さんが同意することで、薬剤師は過去の処方情報や調剤情報の参照が可能になります。

4-1-5. 調剤対象の処方箋の選択

電子処方箋 受付

合わせて患者さんは、調剤対象の処方箋を選択します。患者さん自身が医療機関で電子処方箋を選択した場合は、対象となる処方内容を薬局で確認することができます。

4-1-6. 紙の処方箋の場合

電子処方箋 受付

紙の処方箋の場合は、受付職員は被保険者番号等と新たに記載される引換番号を入力します。

4-1-7. システムへの取り込み

電子処方箋 受付

そうすることで、電子ファイルが薬局システムに取り込まれます。

4-1-8. 処方箋が複数の場合は一括選択又は個別選択も可能

電子処方箋 受付

処方箋が複数ある場合は、一括選択することも、個別に選択することも可能です。電子処方箋管理サービス側で、患者が過去一定期間にもらったお薬の情報をもとに、現在服用中のお薬を抽出し、これから調剤するお薬と重複投薬や併用禁忌がないかを確認します。

自身の薬局の情報だけでなく、電子処方箋対応システムを導入した他の医療機関、薬局の情報も含め、チェックが行われます。

4-2. 処方監査・調剤

4-2-1. 重複投薬や併用禁忌に該当する場合

電子処方箋 処方監査・調剤

重複投薬や併用禁忌に該当する場合、画面上にその内容が表示されます。患者さんが過去のお薬情報の閲覧に同意がない場合でも、今回調剤のお薬に限り、重複投薬や併用禁忌に該当したかを確認することが可能です。処方意図が入力されていることもありますので、内容を確認します。

4-2-2. 任意のタイミングで過去のお薬情報を参照できる

電子処方箋 処方監査・調剤

マイナンバーカードでの受付時、患者さんが過去のお薬情報の提供に同意している場合、薬剤師は任意のタイミングで過去のお薬情報を参照できるようになります。

4-2-3. 登録された1ヶ月以内の処方・調剤情報の参照

電子処方箋 処方監査・調剤

電子処方箋に対応する医療機関、薬局で登録された1ヶ月以内の処方・調剤情報を、処方箋の発行形態を問わず、参照することが可能になります。

4-3. 薬剤の交付・服薬指導・会計

電子処方箋 薬剤の交付・服薬指導

薬剤の調整が完了したら、従来通り、薬剤の交付と服薬指導、会計を行います。

4-4. 処方箋に基づく調剤の記録

4-4-1. 調剤の記録

電子処方箋 処方箋に基づく調剤の記録

会計手続きが終わったら、調剤記録を行います。具体的には、調剤情報のデータに、必要に応じたコメントを入力します。またこれらのデータは、医師・歯科医師に共有することも可能です。電子処方箋の場合は、電子ファイルが原本となります。

4-4-2. 電子署名

電子処方箋 処方箋に基づく調剤の記録

従来の処方箋への記名・押印または署名の代わりに、電子署名を行います。この作業を通じて、調剤結果のデータが電子処方箋管理サービスに登録されます。電子署名は、HPKIカードなどを用いて行います。(※制度上、電子署名は認定事業者のカードを用いることが可能ですが、2022年(令和4年)9月時点ではHPKIカードのみが対応しています)

 

5. 電子処方箋の薬局導入事例について

電子処方箋の薬局導入事例

厚生労働省のホームページでは、電子処方箋の薬局や病院の導入事例が紹介されています。以下、ポイントを御紹介します。

5-1. 広島県びーだま薬局の導入事例

5-1-1. びーだま薬局について

1998年広島県広島市に開局したびーだま薬局は、「処方箋の調剤がなくても立ち寄ってもらえるかかりつけ薬局」を目標に、地域医療に貢献してきました。また最近では、広島県オンライン診療センターや無料抗原検査にも関わっています。

5-1-2. びーだま薬局が電子処方箋を導入した理由

電子処方箋を導入した理由は、広島市立北部医療センター安佐市民病院が先行導入し、地区内の医療機関の連携に意義を感じたとのことです。また「今後のデジタル化は避けられない」との思いもありました。

5-1-3. 電子処方箋を導入する上での不安

導入に関しての不安は、「きちんと導入できるのか」と「きちんと運用できるのか」の2点でした。ただ、一度システムの形が出来上がればそこまで難しくはないという感覚でした。

5-1-4. 電子処方箋導入プロセスの重要ポイント

導入プロセスに関しては、「システム業者との連携」と「よく話し合うこと」が重要だとのことです。また入力作業は薬剤師だけが行うわけではないので、事務スタッフの協力が不可欠だとのことです。

社会保険診療報酬⽀払基⾦が運営する医療機関等向けポータルサイトでは、電子処方箋導入事例が紹介されています。

 

6. 電子処方箋の補助金制度について

電子処方箋 補助金

6-1. 骨太の方針2022について

2022年6月7日、「骨太の方針2022」が閣議決定されました。それには、保険医療機関・薬局を対象に2023年4月からオンライン資格確認の導入を原則として義務付ける旨が記載されました。

また導入促進のために関連する支援も、見直すことが述べられています。そうした中、電子処方箋管理サービスの導入に関する補助金の詳細情報が明らかになっています。

6-2. 電子処方箋管理サービス導入時の補助金について

大手チェーン薬局は、事業額の38.7万円を上限に、その4分の1が補助されます。つまり、9.7万円が補助金の上限になります。また大型チェーン薬局以外の薬局については、19.4万円が補助金の上限額になります。

補助対象事業を、以下に記します。

① 基本パッケージ改修費用:電子カルテシステム、レセプト電算化システム等の既存システム改修費用
② 接続・周辺機器費用:オンライン資格確認端末の設定作業、医師・薬剤師の資格確認のためのカードリーダー導入費用、カードレス導入費用(HPKIカード取得は別途補助)
③ システム適用作業費用:現地システム環境適用のための運用調査・設計、システムセットアップ、運用テスト、運用立ち会い等 

補助金の申請は、2023年2月以降になります。詳細は、『電子処方箋管理サービス等関係補助金の申請について』を参照下さい。

6-3. 電子処方箋の補助金いつまで?

令和7年3月31日までに、電子処方箋管理サービス等関係補助事業を完了する必要があります。そして令和7年9月30日までに、申請しましょう。また令和6年3月31日までに電子処方箋管理サービスを導入した保険医療機関等は、定められた補助率より高い補助率が適用されます。

 

7. まとめ

薬局経営において、電子処方箋への取り組みは必要不可欠です。それは国をあげてのDXへの取り組みとも重なります。

医療レベルの向上だけでなく、医療予算の効率化も至急の課題となっている中で、今後こういった取り組みは加速していくことが予想されます。

当サイトでは、そういった取り組みを今後もどんどんご紹介していく予定です。

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