薬局業界の動向

1. 門前からかかりつけ、そして地域連携へ

処方箋受付の看板

薬局業界は、長らく門前薬局が主流でした。門前薬局は病院やクリニックの近くに立地し、主にその医療機関からの処方箋を扱っています。ただ調剤業務に偏る傾向が強く、地域の健康カウンセラーとしての機能を果たしていない状況がありました。ただ近年の薬局業界の動向は、かかりつけ薬剤師・薬局制度の推進により、患者さんが自由に薬局を選ぶ流れが強まり、門前型からの脱却が求められています。

2. かかりつけ薬剤師・薬局制度の推進

オンライン服薬指導をする薬剤師

厚生労働省のビジョンには、「薬局の薬剤師が専門性を発揮し、ICTも活用し、患者さんの服薬情報の一元的・継続的な把握と薬学的管理・指導を実施する」というものがあります。これを実施することで、多剤・重複投薬の防止や残薬解消も可能になります。また、患者さんの薬物療法の安全性と有効性が向上し、医療費の適正化にもつながります。

3. ドラッグストアの台頭

ドラッグストアの店内風景

日本国内でドラッグストアが増えてきたのは、1970年代といわれています。ビジネスセンスの高い薬局経営者が、医薬品以外に日用品や雑貨も並べ、顧客拡大を目指したのが発端です。1980年代に入ると医薬分業が推進され、多くの薬局は保険調剤を推進しました。その結果OTC薬をあまり売らなくなり、これがドラッグストア躍進の追い風となりました。

1990年には200社が結束し、日本チェーンドラッグストア協会が設立されました。そして2006年の薬事法改正では登録販売者が誕生し、薬剤師がいなくても第2類、3類のOTC薬の販売が可能になりました。近年はドラッグストアの店舗内に調剤室が設けられる「調剤併設ドラッグストア」が増えています。

ドラッグストアのビジネスモデルは、食品や日用品を安売りし、利益率の高い医薬品で稼ぐというものです。例えばコスモス薬局の場合、年間売上高8000億円で食品部門が約6割を占めています。このように、ドラッグストアはスーパー並みに、地域のライフラインとしての存在感が高まっています。ドラッグストアの存在は、薬局業界の動向に影響を与える大きな要素といえます。

4. 薬局業界のDX推進について

薬剤師のDX推進

薬局業界におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進は、近年急速に進んでます。その中心の一つが、「オンライン服薬指導」です。その背景には、日本の高齢化社会の進行による医療・薬剤サービスの需要の増加があります。

しかし一方で、薬剤師の不足や地方の薬局の少なさ、患者さんの通院負担、感染症のリスクなどの課題があります。これらの課題を解決するために、デジタル技術を活用した業務の効率化や患者さんの満足度向上が求められています。

例えばオンライン服薬指導は、通院の手間や待ち時間が削減できます。また地方の高齢者の患者さんにも対応できます。また薬局も業務効率が向上し、新たな顧客層へのアプローチが可能になります。今後は、電子処方箋との連携やAI活用、オンライン診療と統合したトータルな医療DXが予測されます。