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調剤とは?電子システムの活用など次世代の薬剤師スタイルへ

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調剤薬局

超高齢化社会を迎えた日本において、薬剤の専門家である薬剤師の重要性が増しています。なぜなら国が推進する包括ケアシステムにおいて、薬剤師は重要な機能だからです。

例えば現在の国民医療費は圧迫されており、そのため在宅医療が推進されています。その在宅医療における薬物療法には、薬剤師が持つ専門知識と経験が必要不可欠です。ただ一方で重要な対象である高齢者は、複数の医療機関の受診率が高いという課題があります。そういった現状を踏まえて実現すべきテーマが、医療の標準化です。

日本では、1955年に調剤指針が作成されました。これは、調剤の概念や処方箋、処方監査や疑義照会などを解説した薬剤師の規範書です。そして調剤の教則本として、多くの薬剤師に活用されてきました。しかし実際の医療現場では、調剤方法に差があるのも事実です。具体的には、同じ処方内容であっても外観や服用内容が異なることがあります。

この課題を解決するには、医療機関の情報共有が必要です。また同時に調剤方法の標準化も求められます。そこで本記事では、これからの調剤のあり方について解説します。

1. 調剤とは

調剤(ちょうざい)とは、薬剤師が医師の処方箋に基づいて薬を調製し、患者さんに正しく薬を提供する一連の業務です。医療の中でも重要な役割を担っており、安全で効果的な薬物医療を支えています。

今後より質の高い効率的な医療を実現するために、医療DXの推進が加速するといわれています。電子カルテの導入と標準化だけでなく、調剤録のDXや標準化も予定されています。

2. 調剤の流れ

2-1. 処方箋の受け取りと確認(処方監査)

処方内容の妥当性や安全性をチェックします。具体的には「重複投与」「相互作用」「過量投与」「副作用のリスク」などがあります。また以下に該当する場合は、医師に疑義照会を行う必要があります。

・薬剤の規格が書かれていない
・用法の記載漏れがある
・医師の記名押印がない
・新薬や向精神薬などの投与日数が制限を超えている
・名称変更品目や販売中止品目がある
・カラーコピーなど処方箋が偽造の可能性がある

また医師へ確認する場合は、要点をまとめてから連絡するようにしましょう。

2-2. 調剤(薬の用意)

薬剤師が、処方箋通りに錠剤や粉薬、液剤などを計量・分包・混合します。以下に気をつけるべきポイントを記します。

・薬品は読み間違いや取り違えをしないように、ダブルチェックをする
・錠剤の調剤は、複数回確認する
・不明瞭な文字は、無理に判読しない
・散剤をする場合、先に計量器が正常かどうか確認してから薬剤を秤量する
・秤量時の薬剤誤認や秤量間違いの防止に留意する

2-3. 監査

監査では、実際に用意した薬が処方内容と一致しているか最終確認します。またミスを防止するために複数人で確認したり、電子システムを活用したりします。

2-4. 薬の交付(服薬指導)

患者さんにお薬を渡すと同時に、薬の正しい使い方や副作用の注意点を丁寧に説明します。この時、患者さんに理解度に合わせわかりやすく説明することが重要です。

2-5. 薬歴管理

薬歴管理は、「薬の使用状況」「アレルギー歴」「副作用歴」「既往歴」「服用中の薬剤」等を記録します。また薬剤には、市販薬やサプリメントも含まれます。例えば複数の医療機関を受診している患者さんの場合、同じ成分の薬が重複して処方されるリスクがあります。それを薬歴管理することにより、発見・回避し、過剰摂取による副作用を防ぎます。

また複数の薬を併用すると、薬の効果が強くなったり弱くなったり、あるいは有害な作用が生じたりする「相互作用」が起こることがあります。これも薬歴管理することで相互作用のリスクを事前に予測し、薬剤師が医師に処方変更を提案するなどして回避できます。

3. 調剤の種類

3-1. 内服薬の調剤

3-1-1. 錠剤・カプセル剤

基本的にはPTPシートなどの包装のまま払い出します。また一包化や半錠分割、粉砕などの指示があれば、その通りに加工します。

3-1-2. 散剤

電子天秤などを用いて正確に秤量し、分包機で分包します。特に抗がん剤や有色の薬剤などは、前の薬が残らないよう清浄に気をつける必要があります。

3-1-3. 水剤

指示された量で賦形(溶かす、薄める)し、容器に充填します。

3-2. 外用薬の調剤

外用薬とは、身体の外部に適用する医薬品の総称です。例えば皮膚に塗るもの、目に差すもの、鼻に入れるものなどがあります。軟膏やクリーム剤の調剤では、正確な量を計量し、軟膏板(軟膏練り板)や軟膏混合器を用いて、均一になるまで丁寧に混合します。そして混合後は、適切な容器(軟膏壷、チューブなど)に充填します。

また液剤の調製で希釈が必要な場合、指示された濃度になるよう正確に計量し、混合します。付剤や点眼薬などは、処方された数量を正確に準備します。特に点眼薬は開封後1ヶ月が目安の使用期限であるため、複数本を一度に交付する際には注意が必要です。

3-3. 注射薬の調剤

注射薬の調剤は、患者の安全と治療効果に直結する非常に重要な業務です。不正確な調剤は、深刻な副作用や治療効果の減弱を招く可能性があります。

例えば薬剤情報では、「静注用」「筋注用」「皮下注用」など注射薬であることを確認します。また投与量については、年齢や体重、腎機能、肝機能などを考慮した常用量・最大量を超えていないか確認します。投与経路は、「静脈内注射(IV)」「筋肉内注射(IM)」「皮下注射(SC)」「脊髄腔内注射(IT)」など、薬剤ごとに厳密に定められています。

複数の薬剤を混合する場合、その指示が明確か確認します。具体例としては、「生理食塩液100mLに溶解する」「輸液ポンプでの速度設定」などがあります。配合禁忌がないかもこの段階で確認します。点滴静注の場合は、投与速度が指定されていることがあります。

3-4. 無菌調剤

無菌調剤とは、微生物(細菌、真菌など)や異物(微粒子など)の混入を厳重に防ぎながら、注射薬などの薬剤を調製することです。特に点滴静注薬(高カロリー輸液、抗がん剤など)や、患者さんの自宅で投与される在宅中心静脈栄養(HPN)などの薬剤調製において、不可欠な技術です。無菌調剤は、通常無菌調剤室(クリーンルーム)で行われます。

注射薬は、直接血管や筋肉、皮下、あるいは脊髄腔内などの体内に投与されます。そのため少しでも微生物が混入すれば、重篤な感染症(敗血症など)を引き起こし、患者さんの生命に関わる可能性があります。また異物の混入も塞栓症などを引き起こすリスクがあります。そのため無菌調剤は、薬剤師にとって非常に高度な専門技術と厳格な管理が求められる業務です。

無菌調剤が必要な薬剤の例としては、中心静脈栄養(TPN/HPN)があります。これは経口摂取が困難な患者さんに、必要な栄養を静脈から直接投与する高カロリー輸液です。また抗がん剤の場合は、細胞毒性を持つため調製者への曝露防止も重要です。特殊な安全キャビネットを用いて、無菌的に調製されます。

4. 調剤における電子システムの活用事例

調剤における電子システムの活用

調剤における電子システムは、業務の効率化や安全性向上、患者サービス改善に大きく貢献しています。主に以下のような活用事例があります。

4-1. 電子薬歴システム

薬剤師が、患者さんの「服薬履歴」「アレルギー情報」「副作用歴」「併用薬」などを電子的に管理するシステムです。患者情報を瞬時に参照できるため、適切な薬の選択や禁忌薬の確認が容易になります。また複数の医療機関からの処方薬や市販薬との相互作用、重複投薬のリスクを、自動でチェックし、エラーを未然に防ぎます。

4-2. 調剤監査システム

調剤監査システムは、処方箋の内容と実際に調剤する薬剤が、一致しているかどうかを確認するシステムです。例えば調剤された薬剤のPTPシート(錠剤を包装しているシート)などを画像で読み取り、処方箋の内容と照合します。また散剤や水剤の秤量、錠剤の計数ミスなどを防ぐために、システムが計量値をチェックします。類似した名称や、形状の薬剤の取り違えリスクを低減する効果もあります。

4-3. 自動分包機・自動監査ロボット

調剤業務の一部を自動化する機器と連携したシステムです。例えば処方箋情報に基づいて、正確な量を自動で計量し、散薬や水薬を自動計量し分包します。また処方箋通りの錠剤をPTPシートから取り出し、自動で分包・監査を行います。このシステムは、手作業によるミスを大幅に減らし、調剤の正確性を高める効果があります。

4-4. オンライン服薬指導システム

患者さんが、自宅などからオンラインで薬剤師の服薬指導を受けられるシステムです。医療機関への来院が難しい患者さんや遠隔地の方でも、質の高い服薬指導を受けることができます。また医療機関内での滞在時間を短縮し、感染リスクを低減します。このシステムを活用すると、定期的なオンライン面談により、患者の服薬状況を継続的にサポートできます。

4-5. 在庫管理システム

医薬品の在庫状況をリアルタイムで管理し、発注や廃棄を効率化するシステムです。例えば過剰な在庫や品切れを防ぎ、コスト削減と安定的な医薬品供給を実現します。また使用期限の近い医薬品をアラートで知らせ、廃棄ロスを削減します。在庫が少なくなった医薬品を自動で発注する機能を持つシステムもあります。

5. まとめ

調剤業務は、薬剤師の専門知識と経験が活きる重要な業務です。ただし近年の「対物から対人へ」の流れの中で、オペレーション的な業務は自動化が進んでいます。そうすることで生産性や正確性が向上し、より人しかできない業務の選択と集中が可能になります。

特に地域包括ケアシステムの中では、かかりつけ薬剤師としての機能が求められます。在宅医療が推進され、DXを活用したオンライン服薬指導のシェアが高まることが予想されます。

そういった流れの中で、薬剤師としての強みをどこに設定するのか。専門知識、対象別コミュニケーションスキル、DXに関する知識と経験など、次世代の薬剤師スタイルを素早く感知し、貪欲に吸収していく専門職が求められています。

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