リフィル処方箋とは、症状が安定している患者様に発行される処方箋です。医師が「リフィルによる処方が可能」と判断した場合に限り、最大3回まで繰り返し使用できます。
2022年の診療報酬改定で、4月1日からリフィル処方箋は導入されました。一定期間3回以内であれば、同じ処方箋で診察なしでお薬をもらえるようになりました。
本記事では、薬剤師にとってのリフィル処方箋を解説します。
Contents
1. リフィル処方箋について
まずは最初にリフィル処方箋について解説します。
1-1. リフィル処方箋とは
リフィル処方箋とは、医師の判断で同じリフィル処方箋で3回まで薬の受け取りができる制度です。アメリカやフランスでは既に実施されており、日本では2022年4月に導入されました。
症状が安定している患者さんに適用され、再診の必要がなく、通院の負担が軽減されるメリットがあります。ただし、投薬量の限度が定められている医薬品と湿布薬は対象外になります。
1-2. リフィル処方箋のやり方
リフィル処方箋は、上の写真のように処方箋の「リフィル可」欄のチェックボックスにレ点が入ります。また使用回数については、「2回」「3回」というふうに記入されます。
1-3. リフィル制度と分割調剤との違いとは
■ 例えば、「90日分の内服薬」を30日ずつ薬局で調剤する場合の違いです。分割調剤の場合、医師は90日分の処方箋を発行します。そして薬局に対しては、3回の分割指示を出します。一方リフィル制度の場合は、3回繰り返し利用できることを記載し、30日分の処方箋を出します。薬局においては、両方とも医師の指示通り30日分ずつ調剤します。
診療報酬改定から導入の分割調剤には、3つがあります。
年度 | 表題 |
平成28年度(2016年)診療報酬改定 | 医師の指示による場合の調剤分割 |
平成20年度(2008年)診療報酬改定 | 後発医療品を初めて使用する場合の分割調剤 |
平成16年度(2004年)診療報酬改定 | 薬剤の長期保存が困難な場合の分割調剤 |
「医師の指示による場合の分割調剤」は、薬局に対して医師が最大3回までの分割を指示して処方されるものです。
また「後発医薬品を初めて使用する場合の分割調剤」と「薬剤の長期保存が困難な場合の分割調剤」は、医師の指示は必要ありません。薬剤師から医師への連絡は必要ですが、薬剤師の判断で分割調剤を行うことができます。
一方リフィル処方箋の場合は、繰り返し利用できる期間・回数内であれば、患者さんの意思で処方が受けれます。
◆<リフィル処方箋に関するYouTube動画紹介>
「処方箋様式の見直し(リフィル処方箋の仕組み)(2022年度診療報酬改定)」、「【令和6年/2024年度】リフィル処方箋の算定要件化と最新データについて解説(診療報酬改定・調剤報酬改定)」、「リフィル処方と呆れた開業医【第414回】」
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2. リフィル処方箋に関する厚生労働省の通知
2-1. 令和4年度診療報酬改定に関する疑義解釈について
令和4年度(2022年)診療報酬改定の取り扱いに係る疑義解釈は、公表されています。その中で、リフィル処方箋に関する部分を以下にご紹介します。
<医科診療報酬点数表関係>
■ 問254 処方箋の交付について、リフィル処方を行う医薬品と行わない医薬品を処方する場合には、処方箋を分ける必要があるか。
→(答)処方箋を分ける必要がある
■ 問255 処方箋の交付について、リフィル処方により2種類以上の医薬品を投薬する場合であって、それぞれの医薬品に係る処方箋の1回の使用による投薬期間が異なる場合又はリフィル処方箋の使用回数の上限が異なる場合は、医薬品ごとに処方箋を分ける必要があるか。
→(答)処方箋を分ける必要がある
<調剤報酬点数表関係>
■ 問6 「リフィル処方箋により調剤した場合は、調剤した内容、患者の服薬状況等について必要に応じ処方医へ情報提供を行うこと」とされているが、この場合において、服薬情報等提供料は算定可能か。
→(答)算定要件を満たしていれば、服薬情報等提供料1又は2を算定可
■ 問7 リフィル処方箋による2回目以降の調剤については、「前回の調剤日を起点とし、当該調剤に係る投薬期間を経過する日を次回調剤予定日とし、その前後7日以内」に行うこととされているが、具体的にはどのように考えればよいか。
→(答)例えば、次回調剤予定日が6月13日である場合、次回調剤予定日を含まない前後7日間の6月6日から6月20日までの間、リフィル処方箋による調剤を行うことが可能である。ただし、調剤した薬剤の服薬を終える前に次回の調剤を受けられるよう、次回調剤予定日までに来局することが望ましいこと等を患者に伝えること
■ 問8 リフィル処方箋の写しは、いつまで保管する必要があるのか。
→(答)当該リフィル処方箋の写しに係る調剤の終了日から3年間保管すること
■ 問9 一般名処方によるリフィル処方箋を受け付けた場合、2回目以降の調剤においてはどのように取り扱えばよいか。
→(答)2回目以降の調剤においても、一般名処方されたものとして取り扱うことで差し支えないが、初回来局時に調剤した薬剤と同一のものを調剤することが望ましい
■ 問10 リフィル処方箋を次回調剤予定日の前後7日以外の日に受け付けた場合は、当該リフィル処方箋による調剤を行うことはできるか。
→(答)不可。なお、調剤可能な日より前に患者が来局した場合は、再来局を求めるなど適切に対応すること
3. リフィル処方箋のファイル形式について
厚生労働省によるリフィル処方箋のファイル形式についての資料のポイントを、以下にご紹介します。
3-1. ファイル形式の基本的な考え方
リフィル処方箋は、通常の処方箋とは異なります。なぜなら、通常の処方箋とは異なり、薬剤師が前回の調剤結果も把握しながら調剤する必要があるからです。そのためには、当内容を把握できるようなファイル形式にする必要があります。
一方で、医療機関や薬局のシステムと電子処方箋管理システムの改善コストを考慮する必要もあります。つまり、現行のXMLファイルの構造から大幅に変更しないようにする必要もあります。例えば現行のファイル構造が変更になった場合、署名検証のロジックを見直す必要があり、改修コストの増加が予想されます。
上記を踏まえた上のファイル形式案は、以下のポイントが記されています。
① 薬剤師が調剤結果(処方内容と異なる調剤をした場合はその内容及び理由)を電子処方箋管理サービスに登録する
② 次回調剤時に薬剤師が電子処方箋の受付を行う際、電子処方箋管理サービス側が電子処方箋ファイルに前回の調剤結果を付加することで、前回の調剤結果を把握できるようにする
追加する情報について
① 今回の調剤は何回目か
② 前回調剤日
③ 次回調剤年月日
④ 前回の調剤で疑義照会した場合は、その内容及び理由
⑤ 前回の薬局名(※)
⑥ 前回の薬局の連絡先(※)
⑦ 前回の薬局の薬剤師氏名(※)
※患者が薬局を変更する場合、変更前の薬局から変更後の薬局に患者や調剤情報を伝えることが定められている。万が一連絡もなく変える場合、前回の薬局に連絡できるようにする
3-2. 具体的なイメージについて
※厚生労働省「リフィル処方箋のファイル形式について」より引用
厚生労働省の資料によると、リフィル処方箋のファイル形式については上記のように記されています。フェーズは、「処方箋発行」「リフィル1回目」「リフィル2回目」「リフィル3回目」「リフィル4回目」に分かれています。
特に重要なのが、青線で囲まれている「署名対象範囲」です。この部分が、薬剤師が責任を持つ範囲になります。
3-3. ファイル保管期間について
※厚生労働省「リフィル処方箋のファイル形式について」より引用
電子処方箋の保管期間は、登録後100日間としています。これは、レセプト情報が登録されるまで100日間程かかる長期処方等があるからです。また処方・調剤情報は、100日間保管することになっています。その整合性を取るため、抽出元の電子処方箋ファイル等も同じ期間保管しています。
またリフィル処方箋の場合は、医療機関・薬局がファイル等を取得・参照する可能性がある最大期間も考慮する必要があります。それらを踏まえた上で、3つのファイルの保管期間は以下にようになります。
■ 電子処方箋ファイル・処方箋情報提供ファイル/法令上、リフィル処方箋の処方日数に上限はなく、薬局で取得・参照する可能性のある最大期間が異なるから、処方箋毎に保管期間を柔軟に設定する。例:薬剤師が設定する次回調剤年月日+α日、調剤情報提供ファイル登録日+α日など→最低100日は保管する
■ 調剤情報提供ファイル/医療機関が任意のタイミングで本ファイルを取得・参照することは現行と変わりないため、現行どおり100日間とする
4. 現行の重複投薬等チェックの仕組みについて
※厚生労働省「リフィル処方箋のファイル形式について」より引用
電子処方箋管理サービスでは、過去100日間の処方・調剤情報を保存しています。またチェック実施日から100日の間に、処方・調剤された薬剤の服用情報をもとに、現在服用中の薬剤を抽出します。そうすることで、新たに処方・調剤する予定の薬剤との重複投薬・併用禁忌(へいようきんやく)をチェックしています。
また、より実態に即したチェック結果が得られるように、チェックの対象とする薬剤については、以下のようにしています。
現行の重複投薬等チェックの仕組み
① 電子処方箋管理サービスに処方情報のみ登録されている場合/処方情報を対象にチェックする(※電子処方箋非対応の薬局で調剤したため、調剤情報が未登録の可能性もあり、処方情報だけでもチェックを行うこととしている)
② 電子処方箋管理サービスに処方箋に対する調剤結果が登録されている場合、調剤情報を対象にチェックする
5. リフィル処方箋の期限について
5-1. リフィル処方箋の期限切れとは
リフィル処方箋の1回目の使用期限は、発行日を含めて4日間です。これは、通常の処方箋の場合と同じです。万が一この期間を過ぎてしまうと、薬を受け取ることはできません。
注意しなければならないのは、土日や祝日が入った場合考慮されないという点です。連休前などは特に気をつけましょう。
期限切れの場合、再度医療機関を受診する必要があります。処方箋が発行されたら、早めに薬局に行きましょう。
5-2. リフィル処方箋の期限延長について
年末年始や海外旅行などの事情がある場合、受診した時に医師に相談するようにしましょう。状況や理由によっては、担当医師が判断し、事前に処方箋の期限を延長してくれる可能性があります。
■ 事前に医師の指示で、処方箋の使用期間の欄に期間が記載されている場合、その日までを有効期間として延長することができます。
5-3. リフィル処方箋の2回目以降の処方日
リフィル処方箋の2回目以降の調剤は、原則として前回の調剤日を起点とし、投薬期間を経過する日(次回調剤予定日)の前後7日以内とします。
6. リフィル処方箋の対象外について
6-1. 対象外になっている薬
リフィル処方箋の対象外になっている薬は、1回に使用できる限度量が決められている薬です。具体的には、新薬、劇薬、麻薬、向精神薬と湿布薬です。
これらの薬以外でも、服用する薬の種類や量が決まっていない型、体調に変動のある方はリフィル処方箋は発行できません。
6-2. 対象外薬剤リスト
DATA INDEXが、医薬品マスタDBや長期投与制限DBより抽出したリフィル処方箋対象外薬剤リストを公開しています。ただし、確定情報ではないのでご留意下さい。
7. リフィル処方箋の薬局での対応フロー
リフィル処方箋の運用においては、薬剤師の役割が従来以上に重要になります。ここでは、実際の薬局の現場での対応フローを解説します。
7-1. リフィル処方箋受け取り時の確認
7-1-1. 記載事項の確認
まずは処方箋の「リフィル可」欄にレ点があるか、使用回数を確認します。リフィル欄に手書きの記載があった場合は、偽造防止のために医療機関に確認します。先述した通り、投薬量に限度が定められている新薬や向精神薬、湿布薬(63枚の制限あり)は、投薬できません。
また外用薬のリフィル処方箋の場合は、1回当たりの使用量及び1日当たりの使用回数に加えて、投与日数の記載が必要になります。(例:点眼液6瓶 1日6回 両目に点眼 ※30日分)
リフィル処方箋可の薬剤と不可の薬剤が混在する場合(例:降圧剤と湿布薬)は、薬剤ごとに発行します。また薬剤ごとにリフィル回数が異なる場合(例:降圧剤はリフィル3回、頓服使用の鎮痛剤は1回のみ)は、処方箋を分けて発行します。
7-1-2. 有効期間の確認
処方箋の有効期間を確認します。初回の場合は、通常と同じく、交付の日を含めて4日以内になります。また2回目以降は、原則として前回の調剤日を起点とし、当該調剤に係る投薬期間を経過する日を次回調剤予定日とし、その前後7日以内を有効期間とします(例:次回調剤予定日が6月13日の場合、その日を含まない前後7日間である6月6日から6月20日間の間で調剤が可能です)
7-1-3. 有効期間を過ぎた場合
医療機関への受診勧奨をします。
7-2. 妥当性の判断
7-2-1. 患者さんの状態の確認
患者さんの服薬状況等の確認を行います。「副作用の発生」や「体調変化」、「改善不十分」等、リフィル処方箋による調剤が不適切と判断した場合、調剤を行わずに受診勧奨します。また同時に、処方医に速やかに情報提供を行います。
7-2-2. 不適切な場合
医療機関への受診勧奨をします。
7-2-3. 適切な場合
1回あたりの投薬期間及び総投薬期間については、医師が患者さんの病状等を踏まえ、個別に医学的に適切と判断した期間とします。また一般名処方の場合、初回来局時に調剤した薬剤と同一のものを調剤するようにします。
7-3. 服薬の指導
7-3-1. 処方箋への記録について
処方箋には、「調剤日」と「次回調剤予定日」を記載します。また次回調剤予定日は、原則として前回の調剤日を起点とし、当該調剤に係る投薬期間を経過する日を次回調剤予定日とします。
調剤を実施した「保険薬局の名称」や「保険薬剤師の氏名」を、余白もしくは裏面に記入します。
7-3-2. 慢性疾患の服薬指導について
食事や運動、たばこなどの設定した目標の達成状況や、課題を確認します。同時に、前回から当日までの期間に得た「臨床検査値」等も確認します。
また「処方薬の効果」や「副作用」、「服薬アドヒアランス」「残薬」「頓服薬の使用状況」の確認も行います。問題がある場合は、速やかに受診勧奨や医師等への情報提供を行います。
7-3-3. 次回来局時に持参頂くもの
次回来局時に持参頂くものは、「リフィル処方箋」「健康保険証」「マイナンバーカード」「お薬手帳」です。
7-4. 服薬指導後の対応について
処方箋の原本を返却します。もし総使用回数に達した場合は、処方箋原本は薬局で保管します。また総使用回数に満たない場合は、リフィル処方箋の写しを調剤録とともに保管します。(※写しは3年間保管)
リフィル処方箋の総使用回数の調剤が終わった場合、調剤済処方箋として原本を保管します。(※原本は3年間保管)
7-5. 必要に応じて対応
7-5-1. 医療機関への情報提供
調剤した内容や患者さんの服薬状況等について、必要に応じて処方医へ情報提供を行います。情報提供例としては、「調剤した医薬品情報」「一包化や別包などの調剤情報」「服薬指導内容」「服薬状況」「残薬」「体調変化」「併用薬」「生活状況の変化」などがあります。
7-5-2. 服薬期間のフォロー
必要に応じて服薬期間中にフォローを実施します。具体的には、「次回調剤可能期間告知」「来局予定日告知」「服薬状況」「残薬状況」「体調変化」「併用薬状況」「生活状況の変化」などがあります。
7-6. リフィル処方箋サンプル
以下は、リフィル処方箋のサンプルです。
※日本保険薬局協会資料より引用
8. まとめ
リフィル処方箋は、症状が安定している患者さんに医師が処方箋の反復使用が可能と判断した場合に発行されます。
この制度は、薬剤師による服薬管理が前提となっています。また医師と薬剤師が、慢性疾患の患者さんを地域でサポートしていくというタスク・シェアリングという側面もあります。
分割調剤と比べると、リフィル処方箋は枚数が1枚で手順も簡略化されているので、患者さんにとって利便性が向上します。
今後は、自宅の近所の薬局にリフィル処方箋の1回目から持参する患者さんが増えると予想されます。
つまり、これまでの「受診する患者さんを待つ」姿勢から、「かかりつけ薬局として通って頂く」姿勢への変化がより重要になると思われます。
薬局の立地という要素だけでなく、きめ細かなフォロー等で患者さんとのリレーションを深める差別化が必要になるでしょう。