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ジェネリック医薬品とは?品質確保の取り組みも詳細に解説します

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ジェネリック医薬品

ジェネリック医薬品(後発医薬品)の供給が、不安定な状況が続いています。発端は製薬メーカーの不祥事で、2020年12月頃から欠品が発生し始めました。その後、各薬局の連携で乗り越える動きが本格化しました。

マイナビのデータによると、薬局全体の約85%が1,000~1,600種類の医薬品を取り扱っています。またジェネリック医薬品の全国平均シェアは、80.89%です。

つまり日本の医療や薬局経営において、ジェネリック医薬品は不可欠な存在といえます。そんなジェネリック医薬品の供給不足を受け、厚生労働省は対策のポイントを発表しています。それは、「企業情報の可視化」と「少量多品種構造の解消」です。

本記事では、ジェネリック医薬品について、詳しく解説します。

1. ジェネリック医薬品の概要

薬の分類図

1-1. ジェネリック医薬品とは

ジェネリック医薬品(後発医薬品)とは、新薬(先発医薬品)と同じ有効成分を含有し、同一の効能・効果がある医薬品です。有効成分を一から開発していないために開発費用が安く済み、価格が安く設定されています。また服用しやすいように、「大きさ」や「味」、「香り」等を改良したものもあります。

上の図のように、お薬は「医療用医薬品」と「一般用医薬品(OTC医薬品)」の2種類に大別されます。OTCは、「Over The Counter(オーバー・ザ・カウンター)」の略です。

医療用医薬品は、医師の診断によって処方されるお薬です。患者さんが自由に購入することはできません。一方、一般用医薬品(OTC医薬品)は市販薬のことです。薬局や薬店、ドラッグストアなどで、患者さんは処方箋なしで自由に購入できます。

そして医療用医薬品は、「新薬(先発医薬品)」と「ジェネリック医薬品(後発医薬品)」に分類されます。

1-2. ジェネリック医薬品が安い理由

新薬とジェネリック医薬品の開発ロードマップの比較


 

新薬(先発医薬品)を新しく開発するには、膨大な研究・開発費用と時間がかかります。そのため初めて開発された新薬は、特許で保護されています。また20~25年の特許期間は、新薬を開発した会社の独占製造販売が認められています。

新薬の開発には、約9~16年の期間がかかるといわれています。また開発費用も莫大で、約500億円以上かかるといわれています。しかも、新薬の開発の成功率は約22,000分の1といわれています。ジェネリック医薬品は、特許期限切れでその研究開発コストを大幅に短縮できるので安く提供できるのです。

1-3. ジェネリック医薬品の品質確保の取り組み

ジェネリック医薬品は、開発費がかからないため安価で、医療費の削減にも貢献します。しかし、その品質について不安を持つ方もいらっしゃいます。そこで、気になるジェネリック医薬品の品質を担保する試験のポイントを解説します。

1-3-1. 規格試験

ジェネリック医薬品の規格試験とは、有効成分の純度や分量を確認するものです。主要項目を、以下に記します。

項目 適用
 名称(販売名) 〇 
 含量規格(有効成分の含量幅) 〇 
 性状(色・形状等の外観) 〇 
 確認試験(有効成分の特性に基づいて確認するための試験) 〇 
 示性値(注射薬のpH、浸透圧等)
 純度試験(混在する可能性のある重金属、分解生成物等)
 水分含量 ▲ 
 製剤試験(日本薬局方に準じて行われる製剤均一性、溶解性等) 〇 
 特殊試験(消化酵素の消化力試験等特性に応じ設定) ▲ 
 定量法 〇 

注)〇は原則として設定が必要、▲は必要に応じて設定

1-3-2. 溶出試験

溶出曲線と類似性判定の例

溶出試験とは、新薬と同じように体内で溶けるかどうかを確認する試験です。具体的には、溶出挙動を経時的に評価するため、複数の時点でサンプリングを行います。

「平均溶出率の差」と「f2関数の値」の2つの判定基準です。このいずれかがが基準を満たしていれば、2つの溶出挙動は類似であると判定します。

1-3-3. 生物学的同等試験

生物学的同等試験とは、新薬と同じ速さで同じ量の有効成分が、体内に吸収されるかどうかを確認する試験です。また生物学的同等性の要件としては、「対照医薬品/試験医薬品の血中濃度比の平均値の90%信頼区間が、80%~125%の範囲に入る」というものがあります。

ばらつきも含めて80%~125%に入れば、平均値のずれは、平均4%前後に留まることになります。

1-3-4. 安定性試験

安定性試験では、ジェネリック医薬品が「温度」や「光」などに影響されずに、長期保存しても品質に変化がないかを確認します。この安定性試験の結果内容は、医薬品の貯蔵方法や有効期間を設定するための重要な情報になります。

2. 新薬とジェネリック医薬品の違いとは

新薬とジェネリック医薬品の違い

2-1. 添加剤が異なる

ジェネリック医薬品は、新薬と同じ有効成分を同じ量含んでいます。また「効能」「効果」「用法」「用量」が同じで、新薬と同じ臨床効果・作用が得られます。

新薬とジェネリック医薬品の違いの一つは、添加剤です。例えば新薬が製剤特許を有している場合、ジェネリック医薬品は先発医薬品と異なる添加剤を使用することがあります。その場合でも、日本薬局方の製剤総則の規定により、薬理作用を発揮したり、有効成分の治療効果を妨げたりする物質を添加剤として使用することはできません。

つまり、使用前例のある安全性が確認された添加剤のみが、使用されています。仮に使用前例の無い添加剤を医薬品に使用する場合、その添加剤の毒性試験などを実施し、再度安全性等の審査を受ける必要があります。

2-2. 承認審査について

承認審査では、生物学的同等性試験のデータの提出を求めています。そして、主成分の血中濃度の挙動が先発医薬品と同等であることを確認しています。

「米国のジェネリック医薬品は先発医薬品と必ず同じ添加剤を使用している」という話を聞くことがありますが、これは完全な誤解であり、そのような事実はありません。

生物学的同等性試験とは
先発医薬品と治療学的に同等であることを証明するために実施する試験です。BE試験とも呼ばれます。ヒト(健康成人)に先発医薬品とジェネリック医薬品を常用量投与し、両者の血中濃度の推移に統計学的な差がないことを確認します。

 

3. ジェネリック医薬品の必要性について

ジェネリック医薬品の必要性

3-1. 国民皆保険制度の維持には必要不可欠

日本の医療保険制度は、昭和36(1961)年に「国民皆保険」が確立して以来、一定の自己負担で必要な医療サービスが受けられます。その結果、世界最長の平均寿命と高い保険医療水準を実現してきました。

しかし今日においては、急速な高齢化の進展等、医療を取り巻く環境は大きく変化しています。医療保険財政の厳しい中、必要な医療を確保しつつ、人口構造の変化に対応できる持続可能なシステムを作り上げていく必要があります。

3-2. 医療の質を落とさずに自己負担を軽減できる

ジェネリック医薬品は、先発医薬品と治療学的に同等であるものとして製造販売の承認がなされた医薬品です。開発費用を低く抑えられ、低価格での供給が可能です。つまり、高価な先発医薬品と代替可能な医薬品と位置づけることができます。

そしてジェネリック医薬品の促進により、医療の質を落とすことなく、患者さんの薬剤費の自己負担を軽減することができます。同時に、革新的な新薬を医療保険で高く評価することでその開発を促すことも可能です。

このように、ジェネリック医薬品の活用で、限られた医療費資源をより有効に活用することも可能となるのです。

 

4. 人気のジェネリック医薬品について

人気のジェネリック医薬品

日本国内では、どんなジェネリック商品が人気なのでしょうか。Genecalでサイト内での検索数ランキングが掲載されていましたので、以下にご紹介します。

4-1-1. 1位/ヒルドイドソフト軟膏0.3%

皮膚の保湿作用があり、皮膚の乾燥性症状を軽減します。また血行を促進し、血行障害に基づく痛みや腫れを軽くします。通常、凍瘡や瘢痕・ケロイド、指掌角皮症、皮脂欠乏症などの治療に使用されます。

4-1-2. 2位/トランサミン錠250㎎

出血症状に関するプラスミンの働きをおさえ、抗出血・抗アレルギー・抗炎症への効果があります。出血傾向や異常出血、湿疹・じん麻疹・薬疹・中毒疹における紅斑・腫脹・そう痒などの症状、扁桃炎・咽喉頭炎における咽頭痛・発赤・充血・腫脹などの症状、口内炎における口内痛および口内粘膜アフターの治療に使用されます。

4-1-3. 3位/アローゼン顆粒

便通をつけるお薬で、便秘症に用います。大腸を刺激し、腸を活発にして排便を促します。効果8~12時間後で、腸の運動が低下している「弛緩性便秘」に向いています。

4-1-4. 4位/PL配合顆粒

非ピリン系の総合風邪薬です。解熱鎮痛薬や抗ヒスタミン薬など4つの有効成分の作用があります。熱を下げ、頭、関節、筋肉、のどの痛みをやわらげ、鼻水・鼻づまりなどのかぜの症状を改善します。

4-1-5. 5位/デパケンR錠200㎎

小発作や焦点発作、精神運動発作、混合発作などの各種てんかんや、それに伴う性格行動障害(不機嫌・易怒性等),躁病・躁うつ病の躁状態、片頭痛発作の発症を抑制します。

4-1-6. 6位/ピタメジン配合カプセルB25

ビタミンB1、ビタミンB6、ビタミンB12の作用をもつ成分を配合した薬です。ビタミン類の欠乏や、代謝障害時におこる知覚および運動機能障害を回復させます。

4-1-7. 7位/ナゾネックス点鼻液50μg56噴霧用

アレルギー性鼻炎に効果があります。通常成人は、各鼻腔に2噴霧ずつ1日1回投与します。また12歳未満の小児には、各鼻腔に1噴霧ずつ1日1回投与します。

4-1-8. 8位/アイファガン点眼液0.1%

高眼圧症、緑内障に効果があります。眼圧を上げる房水の産生を抑えたり、房水排出(流出)を促します。

4-1-9. 9位/メコジン錠15㎎

感冒、急性気管支炎、慢性気管支炎、気管支拡張症、肺炎、肺結核、上気道炎による咳や、気管支造影術、気管支鏡検査時の咳の治療に使われます。

4-1-10. 10位/ザラカム配合点眼液

眼の中の圧力を上昇させる房水(眼房水)の排出を促します。また房水産生を抑えることによって眼圧低下作用をあらわし、緑内障などの悪化を防ぎます。

 

5. ジェネリック医薬品供給不足の問題について

日テレNEWSで報じられたジェネリック医薬品供給不足

日テレNEWSが報じたジェネリック医薬品供給不足の問題。そこでは「約3割で品薄」「背景に不祥事」「いつ解消される?」というポイントが指摘されています。そのポイントについて、解説します。

5-1. 出荷停止の9割はジェネリック医薬品

日本製薬団体連合会は、製薬会社223社に対して、医薬品の供給状況(2022年8月末時点)について調査し、その結果を9月5日に発表しました。

1099品目が出荷停止、3135品目が限定出荷で、全ての受注に対応できない状況であることが判明しました。合計すると、これは薬全体の28.2%に上ります。出荷停止の9割は、ジェネリック医薬品でした。

こういった深刻な薬不足は、薬局に薬が来ない事態を引き起こしています。そのため、粉末が足りない場合は錠剤をつぶして対応したり、近隣の薬局と連携して足りないものを互いに補う状況も発生しています。入手しにくい薬には、「じんましん」や「高血圧」の薬や、「解熱鎮痛剤」と「かぜ薬」も含まれています。

5-2. 薬不足の背景は製薬会社への行政処分

薬の出荷停止の理由は、「後発医薬品メーカーにおける不適切な製造管理や品質管理に対する行政処分」です。発端は、2020年に発覚した福井県の医薬品メーカー・小林化工による不正でした。水虫治療などの飲み薬に誤って睡眠導入剤が混入されたのです。その結果、服用した2人が死亡、約240人に健康被害が出ました。

国や県の調査によると、小林化工は国が承認していない工程で製造をしていたことが判明しました。また50年近く一部製品の品質試験をせず、結果をねつ造していたことも明らかになりました。それらを受け、福井県は小林化工に対し業務停止命令を下しました。

こうした事態を受け、全国の都道府県が製薬会社に立ち入り調査を実施しました。その結果、2021年3月に日医工、2022年3月には共和薬品工業などが業務停止命令を受けました。

5-3. ジェネリック医薬品はいつ解消される?

こうした事態は、「2~3年は続く可能性がある」といわれています。その理由は、行政処分を受けた企業は全品目の製造手順を再度作り直す必要性があるからです。またそれが厚生労働省に認可されるのに、2~3年かかるとみられています。

毎日薬を飲む必要がある人は、どうしたらいいのでしょうか。日テレNEWSの取材では、日比谷クリニック副院長の加藤哲朗医師は以下のように話しています。

疾患がある人の対応ポイント
① 『処方してほしい時に薬がない』という状況を防ぐ必要がある
② まず手元に残っている薬を確認する
③ 数日分の余裕をみて処方してもらうように主治医と相談する

5-4. 安定供給確立のためにメーカー再編進む?

現在、日本には200社近いジェネリック医薬品メーカーがあります。しかもその大半が、年間売上高10憶円以下の中小企業です。最大手でも2000億円であり、1兆円規模の巨大企業がある海外メーカーとの過当競争が続いていました。

海外のジェネリック医薬品メーカーは、以下があります。

順位 ジェネリック医薬品メーカー 売上高
 1位 サンド(スイス) 96億ドル
 2位 テバ(イスラエル) 89億ドル
3位 ファイザー(米国) 80億ドル
4位 ヴィアトリス(米国) 69億ドル
5位 サンファーマ(インド) 48億ドル

2023年7月24日の読売新聞オンラインによれば、政府はジェネリック医薬品の安定供給に向けて、メーカー再編の仕組み作りに乗り出すことが明らかになりました。

具体的には、厚生労働省内に「後発医薬品産業政策検討会」(仮称)を設置し、経済産業省がオブザーバーとして参加します。検討会では企業の合併・買収(M&A)時の税制優遇や、生産能力を増強する一定額以上の投資への補助などを軸に、業界再編を促す仕組みを検討することとなっています。

 

6. 日本と海外のジェネリック医薬品シェアと取り組み

海外のジェネリック医薬品事情

日本におけるジェネリック医薬品の使用率は、国の方針もあって、年々増加しています。しかし2021年のシェア分析では約70%であり、約95%のアメリカと比較するとまだまだ低い状況です。ここでは、日本および諸外国のジェネリック医薬品事情について解説します。

6-1. 海外とはまだ大きな差があるジェネリック医薬品シェア

日本と諸外国のジェネック医薬品シェア

令和3年度 後発医薬品使用促進ロードマップに関する調査報告書』によれば、日本のジェネリック医薬品のシェアは海外と比較するとまだ低いことがわかります。

6-1-1. 安定供給に向けた国の取り組み

ジェネリック医薬品の安定供給に向けて、国では事前に厚生労働省に報告するよう指導しています。また問題が生じた品目については、「原因究明」「改善方策」「再発防止策」等のヒアリングを実施しています。令和2年度(2020年)には20社、令和3年度(2021年)には32社にヒアリングをしています。

6-1-2. 安定供給に向けたメーカーの取り組み

ジェネリック医薬品メーカーは、「納品までの時間短縮」や「供給ガイドラインの作成」に取り組んでいます。また「安定供給マニュアルの作成」や「業界団体による支援」にも取り組んでいます。

6-1-3. 品質の信頼性に対する国の取り組み

国では、ジェネリック医薬品の品質に関する情報について、ホームページ公表、PMDAメディナビ配信等を通じて情報提供しています。また平成28年度(2016年)から、後発医薬品の品質に関する情報を有効成分ごとにとりまとめた医療用医薬品最新品質情報集(ブルーブック)を作成しています。

6-1-4. 品質の信頼性に対するメーカー・団体の取り組み

メーカー・団体(日本ジェネリック製薬協会)の取り組みとしては、「国の文献調査への協力」「文献で指摘された品目の迅速対応」「医療関係者と国民への情報提供」「品質管理の徹底」があります。

 

7. まとめ

ジェネリック医薬品は、世界でも稀な超高齢化社会を迎えている日本にとって、重要なテーマです。

日本国民の医療費の抑制だけでなく、安全性を強化する必要に迫られています。

電子処方箋の普及で、どのメーカーの薬が安全なのか、より情報のシェアが進みます。その結果、そういった不祥事の抑制効果も期待できる可能性があります。また薬剤師には、そういった情報のアップデータが求められます。

本サイトでは、こういった薬局経営を取り巻く重要な情報を積極的に発信していく予定です。

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