これから薬剤師になろうと考えている方にとって、どんな職場があるのか気になる方は多いのではないでしょうか。一般的な薬剤師のイメージは、調剤薬局や病院、ドラッグストアかも知れません。
しかし、製薬メーカーや化粧品メーカーの研究開発職やMRも薬剤師の職場です。このように、薬剤師の仕事の現場は多岐に渡ります。その中でも、公務員薬剤師の存在をご存知でしょうか。国家公務員と地方公務員の2種類がありますが、公務員の安定性もあり人気があります。
そこで本記事では、公務員薬剤師について解説したいと思います。公務員薬剤師の種類や仕事内容、なり方について詳しく解説します。ぜひ、参考にして下さい。
Contents
1. 薬剤師が多く働くTOP3とは
まず最初に、薬剤師の資格を生かして働くことができる職場の種類をご紹介します。
1-1. 薬局
薬剤師の国家資格を取得した後、働く方が一番多い職場が薬局です。薬局は、「一般薬局(面対応薬局)」「門前薬局」「門内薬局」「院内薬局」の4種類があります。
厚生労働省の方針としては、2025年までに門前薬局をなくし、全ての薬局をかかりつけ薬局に変えるという方針でした。その背景には、全国で約6万店舗ある薬局の「医薬分業」のメリットを実感しにくいというものです。医薬分業とは、医師が処方箋を交付し、薬局の薬剤師が処方箋に基づき調剤を行います。このように医師と薬剤師が業務を分担することで、国民医療の質的向上を目的としています。
ちなみに薬局で働く薬剤師の数は、下記のグラフのように毎年増加しています。(※『薬剤師に関する基礎資料』より)
では、薬局で働く薬剤師の割合はどれぐらいあるのでしょうか。厚生労働省のデータによると、2018年時点で58%の薬剤師が薬局で働いています。つまり、薬剤師全体の約6割が薬局で働いていることになります。
調剤薬局での仕事内容は、処方箋の調剤や薬の管理、服薬指導、在宅訪問などがあります。大手のチェーン薬局は教育制度が充実しているので、教育を重視する方は選択肢として考えるのも良いでしょう。
1-2. 病院
薬局の次に薬剤師が多く働いているのが、病院です。その割合は、17.4%です。病院薬剤師の仕事内容は、調剤や薬品管理、医薬品情報提供、病棟業務、チーム医療への参加など、多岐にわたります。
病院勤務ならでは大きな特徴は、チーム医療への参加です。そこでは、服薬状況と薬物相互作用の確認、副作用のモニタリングを実施し、適切な薬物治療提案を行います。緩和ケアチームや感染制御チーム、栄養サポートチームなど、専門チームに参加することもあります。
病院薬剤師の平均年収は、勤務先の病院の種類や規模、経験年数、役職などによって異なります。一般的には、500万円~600万円程度と言われています。
1-3. 製薬会社
製薬会社で働く薬剤師は、全体の13.3%です。その仕事内容は、「管理薬剤師」「研究開発」「MR」「CRC」「品質管理・品質保証」などがあります。製薬会社での管理薬剤師の仕事のメインは、医薬品の管理です。また研究開発職は、創薬研究部門で新薬開発を行います。
新薬開発は、製薬会社の花形といってもいいでしょう。ただし応募するには、修士課程を修了することが最低限の条件になります。また英文学術論文の発表実績なども必要になります。
2. 公務員薬剤師の割合が少ない理由
公務員薬剤師として働く薬剤師は、どれぐらいるのでしょうか。薬事日報のデータによると、6年制薬学部を卒業し、公務員に就職した学生のシェアは約2.5%です。(※『就職動向調査結果報告書」(平成30年)』
公務員薬剤師が少ない主な理由は、採用枠の少なさです。例えば平成28年度から令和3年度までにおける厚生労働省の薬系技官の採用実績は、各年度8~9名です。かなり狭き門であることは覚悟しておく必要があります。
3. 公務員薬剤師になるには
公務員薬剤師は、国家公務員薬剤師と地方公務員薬剤師の2種類があります。いずれの場合でも、以下の手順を踏む必要があります。
3-1. 薬剤師の資格を取得する
まずは6年制の薬学部に進学し、卒業し、薬剤師国家試験に合格する必要があります。合格した後は厚生労働省に申請し、薬剤師免許を取得する必要があります。
3-2. 公務員試験を取得する
次に薬剤師として公務員になるために、公務員試験を受験し、合格する必要があります。
3-2-1. 試験の種類
試験の種類としては、国家公務員採用総合職試験(薬学・化学・生物・薬学区分)、国家公務員採用一般職試験(大卒程度試験)、麻薬取締官採用試験があります。試験内容は、試験の種類によって、専門試験や適性検査、面接などが行われます。
また試験日程は年度によって異なるります。人事院のホームページなどで、最新の情報を確認する必要があります。ちなみに、2025年度の試験日程を以下に記します。
・専門試験・適性検査/2025年4月12日(土)
・SPI3(テストセンター方式)/書類選考後、2025年4月1日~14日
3-2-2. 受験資格
試験の種類や職種によって、年齢制限や必要な資格が異なります。例えば麻薬取締官の場合は、薬剤師免許を所有できている場合は「29歳以下」が受験上限です。また国家公務員試験の場合は、30歳までとされています。
4. 国家公務員薬剤師について
4-1. 国家公務員薬剤師とは
国家公務員として働く公務員薬剤師は、厚生労働省の総合職です。薬系技術職員として行政や研究を中心とする業務を担当し、全国で300名ほど在籍しています。その種類と仕事内容を、以下に記します。
4-1-1. 厚生労働省の薬系技官
厚生労働省の薬系技官は、医薬品や医療機器、再生医療等製品の審査・承認を行います。また薬事法や食品衛生法などの法律制度の企画立案や、国際的な薬事規制に関する業務も行います。日本の医療・保健行政に貢献し、国内外の関係機関との連携も多く、幅広い視野で業務に取り組めるのが大きな特徴です。
4-1-2. 厚生労働省の麻薬取締官
厚生労働省の麻薬取締官は、麻薬や覚醒剤、危険ドラッグなどの違法薬物の取締りを行います。また密輸や密売などの犯罪捜査や、薬物乱用防止のための啓発活動も行います。麻薬取締官は、薬学の知識だけでなく、捜査能力や行動力も求められる仕事です。
4-1-3. 自衛隊の薬剤官
自衛隊の薬剤官は、自衛隊病院や医務室における調剤や医薬品管理を行います。また隊員の健康管理や衛生指導も行います。災害派遣など、通常の薬剤師とは異なる経験も積めるのが大きな特徴です。
4-1-4. 刑務所の法務技官
刑務所の法務技官は、受刑者の調剤や服薬指導、薬物依存がある受刑者への指導を行います。一般の病衣とは異なり、受刑者の医療に貢献できるのが大きな特徴です。
4-2. 薬系技官の現場事例
新型コロナウイルス感染症の流行時、薬系技官はワクチンの迅速承認や供給確保のために奔走しました。また特例承認制度を活用し、短期間での審査を行う一方で、安全性の確保にも細心の注意を払ったそうです。ある薬系技官は、抗がん剤の供給不足問題に対応するため、製薬会社や病院と協力し、緊急輸入や国内代替薬の確保に尽力したとのことです。
また地方厚生局での査察では、製薬工場の現場を直接視察し、不適切な管理を指摘して改善指導を行うこともあります。「厳しい指摘をした企業の担当者から感謝された」との話もあり、製薬企業と薬系技官の役割の重要性が伺えます。
WHOやJICAのプロジェクトに参加し、発展途上国の薬事行政を支援した経験を持つ薬系技官もいます。「現地での医薬品管理の課題に直面し、日本の制度がいかに整備されているかを実感した」という声もあります。
5. 地方公務員薬剤師について
5-1. 地方公務員薬剤師とは
地方公務員の薬剤師は、各自治体で専門知識を活かして多岐にわたる業務に従事しています。地方公務員薬剤師になるには、各自治体が実施する地方公務員試験に合格する必要があります。ポイントを、以下に記します。
5-1-1. 県立病院や市立病院など公立病院
一般の病院薬剤師とほぼ同様の業務を行います。具体的には、入院患者や外来患者への調剤、服薬指導、医薬品の管理などがあります。またチーム医療への参加も行います。
5-1-2. 保健所
保健所での仕事内容は、薬局や医薬品販売業者への立ち入り検査や指導を行います。また食品衛生や環境衛生に関する業務や、感染症予防に関する業務も行います。薬事行政に関する業務が中心になるのが、大きな特徴です。
5-1-3. 衛生研究所
衛生研究所での仕事内容は、医薬品や食品、環境などの検査や分析を行います。また感染症や公衆衛生に関する研究や調査も行います。
5-1-4. 県庁や市役所などの自治体
県庁や市役所などの自治体での仕事内容は、薬事に関する許認可や監視指導を行います。また地域医療に関する計画や立案、医薬品や医療機器に関する情報提供も行います。
5-2. 地方公務員薬剤師の現場事例
保健所勤務の薬剤師は、違法な医薬品販売をしていた業者を摘発し、住民の健康を守ることに貢献しました。業者は最初は「問題ない」と主張していましたが、調査を進めるうちに法律違反が明らかになり、適正な運営を促したとのことです。
またある薬事監視員が定期監査で訪れた薬局で、薬歴(患者の服薬記録)の未記入が多数見つかり、改善指導を実施しました。しかし最初は「忙しくてできない」と言われたが、薬歴の重要性を説明し、最終的には管理が適切になったとのことです。
ある病院薬剤師は、がん患者への抗がん剤治療の副作用管理を徹底し、患者のQOL(生活の質)向上に貢献しました。副作用に悩む患者に最適な処方を医師と相談し、生活の質が改善したと感謝されたそうです。
6. まとめ
公務員薬剤師は、国家公務員薬剤師と地方公務員薬剤師の2種類があります。その名の通り、薬剤師の資格だけでなく、公務員の試験を受けて合格する必要があります。
求人枠が非常に少ないので、目指される方は、事前準備をしっかりする必要があります。試験対策としては、教養試験対策と専門試験対策、面接対策が必要です。教養試験対策としては、公務員試験対策の参考書や一般常識問題を学ぶ必要があります。
また専門試験対策は、薬剤師国家試験の勉強をベースに復習するのが効果的です。過去問を解いて、出題傾向を把握するようにしましょう。面接対策としては、志望動機や自己PRを準備するようにしましょう。
公務員薬剤師は、安定した職業であり、地域や国の医療・衛生管理に貢献できるやりがいのある仕事でもあります。目指される方は、仕事内容をしっかり理解し、万全の準備で合格を勝ち取って下さい。