チーム医療とは、医師や薬剤師、看護師などが分担・連携する医療提供体制です。各専門職が分担や連携、相互支援するので、各職種の負担も分散し、軽減されます。
そのチーム医療において、薬剤師の果たす役割は多岐に渡ります。例えば医薬品の調製や、供給の管理、品質管理などがあります。また患者さんに対しても、医師との協働や薬学的なケアがあります。
本記事では、チーム医療における薬剤師の役割について詳しく解説します。
Contents
1. チーム医療の最新事情について
1-1. チーム医療の基本概念とは
チーム医療は、医師や薬剤師、看護師、リハビリスタッフ、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーなど、さまざまな専門職が連携する医療体制です。そして患者さんとその家族も、チームの一員と考えられています。
またチーム医療の4つの要素として、「専門性志向」「患者志向」「職種構成志向」「協働志向」があります。これらの要素がうまく相互機能することがとても重要です。
1-2. 電子カルテの共有化
病院には、電子カルテやレセプトコンピュータ、各部門システムなどの情報システムがあります。医療のデジタル化を推進する「医療DX令和ビジョン2030」により、将来的にはほぼ全ての医療機関で電子カルテの導入実現が予想されています。
1-3. オンラインカンファレンス
コロナ禍以降、Web会議を活用した症例検討会や多職種連携会議が普及しました。例えば医療チーム当事者だけではなく、他の医療チームや専門家の意見を取り入れるためにも、オンラインカンファレンスは効果的です。
1-4. リモートモニタリング・指導
オンラインでのモニタリングや指導は、感染リスクを減らせ、アドヒアランスも落ちることはありません。また病院に行く必要がないので、高齢者や足が不自由な方でも、安心してコミュニケーションを取ることができます。
1-5. 多職種連携の深化
がん医療や緩和ケアでは、医師や薬剤師、心理士、ソーシャルワーカーが協力して患者を支援します。また認知症ケアでは、地域包括ケアシステム内で医療・介護の連携が強化されます。
1-6. AI・デジタル技術の導入
診断支援AIは、画像診断や病理診断業務において活用が進んでいます。患者データのビッグデータ解析は、最適な治療法や予後予測に活用されています。また脳卒中後のリハビリにロボット技術を活用し、回復促進を図る試みも増えています。
2. 地域医療とチーム医療の融合について
地域包括ケアシステムでは、病院やクリニック、介護施設や訪問看護などの連携が推進されています。そうすることで、高齢者が要介護状態になっても、自分らしい暮らしを自宅で最後まで送ることができます。例えば地域包括ケアシステムの範囲は、「30分以内にサービスが提供できる日常生活圏」とされています。
日本の総人口は減少する一方、後期高齢者の割合が増加しています。特に2025年は、団塊の世代が75歳を迎え後期高齢者となり、本格的な超高齢化社会を迎えるタイミングです。こういった高齢化社会に対応するため、在宅医療と介護サービスの一体化が進むことが予想されます。
薬剤師と薬局は、このような状況の変化への対応が求められています。例えば地域包括ケアシステムを担う一員として医療機関と連携し、安全かつ有効な薬物療法を提供する役割が求められます。特にかかりつけ薬剤師による服薬指導一元管理や在宅対応、医療機関連携は重要です。
ただ課題として、情報共有の難しさやコミュニケーションギャップが挙げられています。また地方では、医療スタッフの確保が大きなテーマになっています。
3. チーム医療における薬剤師の役割とは
3-1. 薬関連①/医薬品の調製・供給管理
医師の処方箋に基づく調剤にとどまらず、薬物療法を受けている患者さんの薬学的管理を行います。例えば疼痛緩和用の医療用麻薬を含む全ての医薬品を、適切に供給します。
また抗がん剤の場合、安全キャビネット内で適切な器具を用いて無菌調製します。そうすることで、医師や看護師の抗がん剤からの被曝による健康被害を防止します。
3-2. 情報関連①/薬学的な患者ケア
患者さんの経過や状態を確認し、必要な場合は医師への疑義照会を行います。また薬物の血中濃度の測定や解析、副作用のモニタリングも行います。そして患者さんの薬剤による副作用防止と有効性の確認を行い、医師や看護師など他のチーム医療のメンバーと情報を共有します。
3-3. 薬関連③/問題点の把握と薬学的提案/
疑義照会として、薬剤の選択や投与量と方法、期間等について、処方の提案を行います。 例えば処方された内服薬が錠剤であっても患者さんの状態によっては、内服薬に変更になる場合があります。具体的には、散薬や口腔内崩壊錠、ドライシロップなどです。
4. まとめ
チーム医療で大切なのは、各自が自分の立場や役割を自覚し活動することです。同時に他のメンバーの仕事を信頼、尊重し、同じ目標に向って協力し支援することです。
その中での薬剤師の役割は、大きく2つに部類されます。それは、物としての薬を志向した業務と薬の情報を臨床応用する業務です。患者さんの薬学的ケアだけでなく、問題点の把握や薬学的提案が求められます。また処方提案や処方設計支援といった医師との協働も大切な要素です。
国民の5人に1人が後期高齢者(75歳以上)という超高齢化社会を迎えた2025年。より地域に根差した医療ニーズが高まる中で、薬剤師に求められる役割は大きく変化しつつあります。