服薬アドヒアランスは、患者さんがどれ位処方通りに服薬しているかというものです。
その意識を高めるためには、服薬の意義をしっかり理解してもらうことが大切です。例えば服薬指示を守らないと、医療費の増加を招き、生活の質(QOL)も悪化する可能性があります。
そうならないためには、患者さんにはご家庭で健康のために治療に参加してもらう必要があります。そうすることで治療効果が高まり、病気の再発を防ぐことができます。
本記事では、服薬アドヒアランスについて解説します。
Contents
1. 服薬アドヒアランスとは
服薬アドヒアランス(英:Adherence)とは、医師が指示した薬の服用方法(服用回数、タイミング、量など)を、患者さんがしっかり守ることを指します。
日本語では、「服薬遵守」や「服薬遵守率」とも呼ばれます。「アドヒアランス」では、単なる「服薬(コンプライアンス)」と異なり、患者さんが自ら進んで治療計画に従い、薬を服用する意識や行動を重視しています。
2. 服薬アドヒアランスの背景
従来は、患者さんが医師の指示にどれぐらい従うかというコンプライアンスの概念が、患者さんの評価でした。しかしこの評価方法は、医療従事者側に偏ってしまうことが問題視されていました。
その後「患者さん自身が積極的に治療に参加する」ことが、治療の成功に繋がるという考え方が広まりました。これが、アドヒアランスの背景にあります。
その場合重要なのは、服薬の意義をきちんと理解し、納得してもらうことです。例えば「なぜお薬を飲む必要があるのか」「飲まないとどんなリスクがあるのか」を説明します。そして患者さん本人に治療に積極的に参加してもらうことが大切です。
3. 服薬アドヒアランスの重要性
患者さんが服薬アドヒアランスを守ることは、病気の治療効果を高め、再発や合併症のリスクを低減する上で非常に重要です。例えばアメリカの場合、医師の指示を守って服薬するのは50%程度といわれています。
また内閣府の調査では、2021年10月1日時点で日本の総人口に占める65歳以上の高齢者の割合は31.8%となっています。これほど高齢化社会が進んでいる日本では、患者さん自身が積極的に治療に参加できる環境作りが大切です。
例えば、高血圧や糖尿病、うつ病などの慢性疾患の治療では、薬の継続的な効果が必要です。そのため服薬アドヒアランスが、治療の成否に大きく関わってくるのです。
お薬を正しく服用することで、下記のような効果を期待できます。
1-1. 治療効果の最大化
持続的な治療効果により、病気が安定しやすくなります。特に高齢者の場合、身体的・精神的な機能障害のためのお薬が多く、薬同士の相互作用や副作用のリスクも高まります。
そうならないためには、医師や薬剤師との関係性が大切です。円滑な双方向のコミュニケーションは、治療効果の最大化に貢献します。
1-2. 副作用の回避
服薬アドヒアランスは、治療の効果を最大限に引き出し、副作用のリスクを最小限に抑えるために非常に重要です。例えば患者さんは一定量を正しく服用することで、副作用の発生を抑えられます。また軽度の症状に留めることができます。
1-3. 耐性菌の発生予防
抗生物質など、耐性菌が出やすいお薬の場合、用法・用量を守ることが特に重要です。抗生物質は細菌感染症の治療に用いられますが、正しく服用しないと耐性菌が生まれ、治療が困難になることがあります。
一方で、患者さんが吐き気や下痢などの副作用を心配して、服用を中断してしまうこともあります。それを防ぐには、患者さんに効能や飲み方を理解して頂くことが重要です。またお薬手帳に記録したり、飲み忘れを防ぐためのスマートフォンのアラーム設定といった工夫も効果的です。
4. 薬物治療を守らない理由とは
効果的な薬物治療には、医師の指示に沿った服薬が必要不可欠です。しかし処方通りに服薬される患者さんは、100%ではありません。では、実際にどのような理由で服薬を守れないのでしょうか。ここでは、その代表的な例をご紹介します。
・薬を服用するのを忘れてしまった
・医師の指示を十分に理解できていなかった
・実は副作用の経験がトラウマになっている
・処方された薬の味や匂いに抵抗がある
・指示の内容が複雑で、面倒に感じている
・薬はあまり効かない、もしくは必要性がないと感じている
5. まとめ
服薬アドヒアランスは、高齢化社会が進む日本の医療において、重要なテーマです。
例えば服薬の意義や効果を患者さんに十分理解して頂くことは、症状に改善に必要不可欠です。そのためには、患者さんと円滑なコミュニケーションを図り、服薬するモチベーションを高める必要があります。
また服薬カレンダーやアプリの活用、ご家族や介護者のサポートなどで、服薬アドヒアランスを向上させるための工夫も大切です。
服薬指導については、『服薬指導とは?患者さんを健康に導くコミュニケーションとは』で詳しく解説しています。こちらも参考にして下さい。