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薬剤師になるための実務実習とは?薬局実習や病院実習を解説

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近年医療技術の進化は目覚ましく、薬剤師に求められる資質やスキルは、年々向上しています。薬学部の修業年限は6年になり、薬剤師に求められる役割は広範囲に渡っています。

また「2025年問題」に象徴される超高齢化社会の到来で、医療の在り方も大きく変化しています。例えば国民の5人に1人が75歳以上になり、在宅は更に増えることが予想されます。

このような社会の変化に対応できる薬剤師を育成するのが、実務実習です。本記事では、その内容について詳しく解説します。

 

1. 薬剤師になるための実務実習とは

実務実習は、薬学部の学生が現場での実務経験を積むために行う重要なプログラムです。例えば薬剤師になるには6年間の薬学課程を修了する必要があります。その中で「薬学共用試験(CBT・OSCE)」に合格後、実務実習を受ける必要があります。

1-1. 薬学共用試験とは

薬学共用試験は、日本の薬学部に在籍する学生が受験する全国統一試験です。CBT(Computer-Based Testing)とOSCE(Objective Structured Clinical Examination)の2つの試験で構成されています。

これらは、薬学教育モデル・コアカリキュラムに基づいた試験で、薬剤師としての基本的な知識や技能、態度を評価することを目的としています。またこの試験に合格しないと、薬学部5年次以降の薬局・病院での実務実習に進むことができません。そのため、薬学部の学生にとってとても重要な試験です。

1-2. 薬剤師になるための実務実習概要

実務実習は、薬局と病院で計22週間(約5~6か月)行われます。これは、「薬局11週間」と「病院11週間」の2つのパートに分かれています。

医学部を併設している大学では、実習先として附属病院が利用される場合があります。多くの大学では、一般社団法人薬学教育協議会の下部組織である実務実習調整機構で、学生の実習先を調整されます。

2. 薬局実習について

薬局実習は 薬学部の6年制のカリキュラムに含まれる「薬学実務実習」の一環として行われます。大学の薬学部で4年間基礎知識を学んだ後、5年次に病院と薬局で実習を受けます。

2-1. 薬局実習のポイント

薬剤師になるための薬局実習のポイントを、以下に記します。

2-1-1. 概要

① 期間/11週間(約3ヶ月)
② 場所/保険薬局(調剤薬局)
③ 目的/実践的に薬剤師の業務を学ぶ
④ 対象者/CBTとOSCEに合格した薬学部の5年生

2-1-2. 調剤業務の実践

① 処方箋の受付と処理
② 薬を正確に取り揃えるように調剤を学ぶ
③ 処方の適切性を確認できるように監査を学ぶ
④ 患者さんへの薬の説明方法を学ぶ

2-1-3. 服薬指導

① 患者さんへの薬の飲み方と副作用の説明方法を学ぶ
② アドヒアランス(服薬遵守)の向上支援
③ OTC医薬品(市販薬)の説明方法を学ぶ

2-1-4. 医薬品の管理

① 医薬品の在庫管理と期限管理を学ぶ
② 医薬品の発注と納品確認を学ぶ
③ 処方薬とOTC薬の違いについて学ぶ

2-1-5. 在宅医療のサポート方法

① 患者の自宅や施設を訪問し、薬の管理をサポートする方法を学ぶ
② 医師や看護師と連携してチーム医療に参加する方法を学ぶ

2-1-6. 疾病や薬剤に関して学ぶ

① 糖尿病や高血圧、感染症などの薬物治療の実践方法を学ぶ
② 副作用の管理や報告方法を学ぶ
③ 薬歴の記録方法と活用方法を学ぶ

2-2. 薬局実習の流れ

2-2-1. 導入研修/1週目

実習の目的や、薬局のルールを学びます。また実際の服薬指導や、調剤業務の現場を見学します。

2-2-2. 調剤業務の実践/2~5週目

調剤や監査、服薬指導を練習します。患者さん対応の基本を、習得します。

2-2-3. 在宅医療・チーム医療の学習/6~8週目

在宅訪問に同行し、他職種との連携業務を経験します。

2-2-4. 実習成果の確認と発表/9~11週目

実習で学んだことをまとめ、レポートの作成やプレゼンテーションを行います。

2-2-5. 薬局実習を成功させるポイント

薬局実習は、実際の薬剤師のもとで学べる貴重な機会です。少しでもわからないことがあれば、積極的にどんどん質問しましょう。またその日に学んだことはノートに記録し、何回も復習しましょう。そうすることで学習効果が上がり、またレポート作成にも役立ちします。

3. 薬剤師になるための病院実習について

薬科大学の学生は、病院でも実習を行い、薬剤師として必要な知識・技術・倫理観を学びます。ここでは病院実習に焦点を当て、詳しく説明します。

3-1. 病院実習のポイント

薬剤師になるための病院実習のポイントを、以下に記します。

3-1-1. 概要

① 期間/4週間
② 場所/病院内の薬剤部
③ 目的/医薬品の管理や調剤、服薬指導、チーム医療を学ぶ
④ 対象者/CBTとOSCEに合格した薬学部の5年生

3-1-2. 薬剤部での業務体験

① 処方箋チェックや注射薬調剤などの院内での調剤業務
② 輸液や抗がん剤などの無菌調剤
③ 医薬品の保管や在庫管理

3-1-3. 服薬指導・病棟業務

① 入院患者さんへの服薬指導
② 患者情報を把握するための電子カルテ確認
③ 医師や看護師とのカンファレンスでチーム医療を実践する

3-1-4. 医薬品の情報提供

① 医薬品の副作用や相互作用のチェック
② DI業務(ドラッグ・インフォメーション) の体験(医師・看護師への情報提供)

3-1-5. 医療倫理と安全管理

① 個人情報の取り扱いのルールを学ぶ
② ヒヤリハット事例を学習し、医療事故防止対策を学ぶ
③ 薬剤師の責任 を学ぶ

3-2. 病院実習の注意点

病院実習中の身だしなみは、清潔な白衣を着用し、爪や髪型、香水に注意する必要があります。また報告・連絡・相談(ホウレンソウ)を徹底し、わからないことがあれば積極的に質問しましょう。またメモを取り、患者さんへ丁寧な対応とプライバシー保護にも留意しましょう。

3-3. 病院実習後のレポートについて

病院実習終了後は、レポートの提出が必要になります。

① 調剤や服薬指導、チーム医療など、実習で学んだこと
② 薬の副作用や相互作用の管理など、印象に残った症例を記す
③ 自分の課題と今後の目標について

4. 薬学部の実務実習の期間と日程について

2025年度と2026年の実務実習実施日程を以下に記します。

4-1. 2025年度日程

① 第Ⅰ期/2月17日(月)~5月4日(日)
② 第Ⅱ期/5月19日(月)~8月3日(日)
③ 第Ⅲ期/8月18日(月)~11月2日(日)
④ 第Ⅳ期/11月17日(月)~2月8日(日)

4-2. 2026年度日程

① 第Ⅰ期/2月16日(月)~5月3日(日)
② 第Ⅱ期/5月18日(月)~8月2日(日)
③ 第Ⅲ期/8月17日(月)~11月1日(日)
④ 第Ⅳ期/11月16日(月)~2月7日(日)

5. 薬剤師になるための実務実習のまとめ

薬剤師になるための実務実習では、実習施設のスタッフの円滑な連携が必要です。例えば責任薬剤師の管理のもと、認定実務実習指導薬剤師の資格を持つ薬剤師が中心となって、実務実習指導を行います。また薬剤師以外の医療従事者も含めて、各自の役割分担などの調整も大切です。

実務実習は、薬剤師としての実践力を高める貴重な経験の場です。積極的に取り組み、学びの多い実習にしましょう。

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