調剤薬局のレセプトは、請求書類のことです。医療機関が患者さんから受け取る代金は一部で、大部分は健康保険組合に請求します。その医療費の明細書が「レセプト」と呼ばれています。
調剤薬局のレセプトは「調剤報酬明細書」、医科や歯科の場合は「診療報酬明細書」とも呼ばれています。このレセプトを作成する業務がレセプト業務で、薬局の収益を支える重要な業務です。
本記事では、調剤薬局のレセプト業務について詳しく解説します。
Contents
1. 調剤薬局のレセプト業務とは
調剤薬局のレセプト(レセプト請求)とは、薬局が患者さんに提供した調剤報酬を、健康保険組合や国民健康保険などの保険者に請求するための明細書のことです。これは他の医療機関と同じく、保険診療の報酬を受け取るために必要な手続きとなります。
実際にレセプトの書き方は、『【見本付き】レセプトの正しい書き方と注意点を解説』がわかりやすく参考になります。
2. 調剤報酬の計算要素について
レセプトの請求項目は、以下の要素で構成されます。
① 調剤基本料/地域支援体制加算がある薬局、小規模薬局、チェーン薬局などで点数が変動する
② 薬学管理料/服薬指導や薬歴管理、在宅訪問服薬指導などに関する報酬
③ 調剤料/内服薬や外用薬、注射薬などの調剤にかかる技術料
④ 薬剤料/実際の薬の価格(薬価)
⑤ 特定加算/夜間・休日対応加算、麻薬管理指導加算など
2. 調剤薬局のレセプト請求の流れ
2-1. 調剤内容の入力
調剤報酬コンピュータ(レセコン)を使用し、処方箋情報を入力します。また調剤内容や服薬指導の内容、加算情報などを入力します。
2-2. 点数の計算
薬価基準や診療報酬点数表に基づいて、点数を計算します。
2-3. レセプトの電子化
従来の紙媒体による提出(紙レセプト)か、電子レセプト(オンライン請求)を行います。現在は、ほぼ電子請求が主流になりつつあります。
2-4. 審査支払機関への提出
毎月10日までに、「社会保険診療報酬支払基金」もしくは「国民健康保険団体連合会(国保連)」に提出します。
3. 調剤薬局のレセプトのオンライン請求
3-1. オンライン請求の概要
オンライン請求とは、調剤報酬の請求業務を電子的に行う仕組みです。従来は紙のレセプトを作成し、審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会)に郵送していました。一方オンライン請求では、インターネットを通じてデータを送信します。原則として、全ての薬局はオンライン請求が義務化されています。
3-2. オンライン請求のメリット
② 書類の印刷や郵送費が不要になることで、郵送コストが削減できる
③ 自動チェック機能でミスを減らせ業務効率が向上できる
④ 封書の紛失リスクがないため、セキュリティが向上する
3-3. オンライン請求の手順について
3-3-1. 導入の準備
まずは、オンライン請求に必要な設備やソフトウェアを整えます。
② オンライン請求用の専用端末(PC)
③ 専用ソフトウェア(レセコンと連携)
④ インターネット回線(セキュリティ要件を満たすもの)
3-3-2. 登録申請
オンライン請求を行うために、「オンライン請求の利用申請」を行います。審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金・国保連)に申請し、審査が通れば、利用が可能になります。
3-3-3. データ作成と送信
② 審査支払機関にオンラインで送信します
③ 送信結果を確認し、必要に応じて再送信します
3-3-4. 支払・結果確認
請求後に審査が行われ、適正なものは支払が確定します。そして支払基金や国保連合会からの審査結果を確認し、返戻や査定があれば対応します。
3-4. オンライン請求システムの種類
調剤薬局のオンライン請求には、大きく分けて3つの方法があります。
3-4-1. 社会保険診療報酬支払基金(支払基金)経由
健康保険組合や協会けんぽなどのレセプトを処理します。また専用のオンライン請求システムを使用します。
3-4-2. 国民健康保険団体連合会(国保連)経由
市町村国保・後期高齢者医療のレセプトを処理します。各都道府県の国保連ごとにシステムが異なります。
3-4-3. ASP(アプリケーションサービスプロバイダー)利用
外部のクラウドサービスを活用し、オンライン請求を代行します。セキュリティ管理が簡単で、負担が少ないというメリットがあります。
4. 調剤薬局のレセプトの取り下げについて
調剤薬局では、健康保険組合や国民健康保険などの保険者に対して、処方箋に基づいた調剤報酬の請求(レセプト請求)を行います。しかし、何らかの理由で提出したレセプトを取り下げる必要が生じることがあります。
4-1. レセプトの取り下げが必要なケース
4-1-1. 誤った請求をしてしまった場合
誤った自己負担率の適用などで、患者負担額の計算ミスがあります。また処方箋の記載ミスを反映せずに請求したり、自費扱いすべきものを保険請求してしまうケースもあります。
4-1-2. 処方箋の内容に変更があった場合
処方箋の変更により、既に提出したレセプトと実際の調剤内容が異なってしまうケースがあります。
4-1-3. 患者さんの保険資格が無効だった場合
保険証の確認ミスで、資格喪失した患者さんのレセプトを誤って請求してしまうケースがあります。
4-1-4. 保険者からの返戻後に請求を取りやめる場合
内容の不備などで支払いが認められない保険者からの「返戻」を受け、再請求ではなく取り下げを選択するケースがあります。
4-2. レセプトの取り下げ方
4-2-1. レセプト提出前の場合
オンライン請求で提出後に誤りに気付いた場合、速やかに審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金または国保連合会)へ連絡し、取り下げの手続きを行います。また紙レセプトの場合、送付前であれば回収し、正しい内容で再提出できます。
4-2-2. レセプト提出後(審査前)の場合
すでに審査が開始されている場合は、保険者や審査支払機関へ直接問い合わせをし、状況に応じた対応を確認する必要があります。審査後の場合は、支払い決定後は原則取り下げできませんが、過誤調整(後述)による修正が可能な場合もあります。
5. まとめ
2025年以降、調剤薬局のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む中で、オンライン請求のシステムも進化する見込みです。
今後は、患者さんの情報をリアルタイムで確認するオンライン資格確認との連携が強化されることが予想されます。またAIによる審査支援によって、査定や返戻を自動解析することも可能になるでしょう。
またクラウド型の請求システムが普及し、コスト削減と簡便化が実現するでしょう。
薬局経営の収益の仕組みを支えるレセプト業務の技術革新については、日々のアップデートがとても重要です。