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薬の一包化とは?メリット・デメリットから費用例まで解説します

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薬の一包化

薬の一包化とは、服用のタイミングが同じ薬や1回に複数の錠剤を服用する時、一つの袋まとめることです。そうすることで、飲み間違いや飲み過ぎ、錠剤の紛失等を防ぐことができます。現在、日本では超高齢化が進んでいます。また認知力低下による服薬コンプライアンスの低下や、残薬の増加等が問題になっています。薬の一包化は、そういった問題の解決策にもなります。

本記事では、薬の一包化について詳しく解説します。

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1. 薬の一包化とは

分割調剤

1-1. 薬の一包化について

病院で処方された薬を保険薬局で受け取る時、服用する1回分ごとに包装し直すことができます。具体的には、薬剤師が包装シートから錠剤やカプセルを取り出します。そして処方内容に合わせて、1回分ごとにパックします。これを、一包化といいます。一包化の読み方は、「いっぽうか」です。

また複数の医療機関で処方された薬や、一つの医療機関の異なる診療科で処方された薬をまとめることもできます。既に処方された手元にある薬を医療機関に持参して、合わせて一包化することも可能です。

例えば一包化に適したパターンとしては、複数のお薬を飲む時間が、朝・昼・夕など同じ場合です。また何種類もの錠剤を一度に飲む場合や、PTP包装シート等で薬剤を取り出しにくい場合も一包化に適しています。

1-2. 一包化できない薬

一包化用の包装には、セロハンポリエチレンラミネート紙(セロポリ)やグラシン紙が使用されています。この素材は水分の透過性が高く、遮光処理が施されていません。そのため湿気や光に弱い薬の場合、一包化は品質低下のリスクがあります。本サイトでは、一包化にできない薬一覧を掲載しています。『一包化できない薬一覧とは?その理由についても詳しく解説します』をご覧下さい。

 

2. 薬の一包化のメリットとは

一包化のメリット

2-1. 飲み間違いや飲み忘れ、飲み過ぎがなくなる

超高齢化社会が進む日本では、70代や80代の方で、ご自宅でお薬を服用されている患者さんが多数います。また糖尿病や高血圧、心疾患や脂質異常症など、複数の疾患をお持ちの方も多数います。東京都健康長寿医療センターの調査では、6割の高齢者が3つ以上の慢性疾患を抱えています。そうすると、どうしても服用するお薬を間違えたり、忘れてしまうことが発生します。

例えば一包化の袋には、「氏名」「用法」「薬剤名」「服用日」が記載できます。そのためいつに飲めばいいかを守るだけで、適切な量の薬剤を服用することができます。

2-2. 本人の服薬管理が楽になる

一包化していない場合、飲む薬の種類や量を自分自身で選ぶ必要があります。しかし一包化することで、1回分の薬がパッケージ化され、服用管理の負担が軽減されます。

2-3. 介助者の服薬負担が減る

護の現場では、患者さんへのお薬投与の負担度は、体位変換や衣類の着脱介助と同じぐらい大変との報告もあります。また一日の服薬回数が多いほど、正しく服用されにくい傾向があります。例えば患者さんのお薬を一包化することで、介護者の負担軽減と服用の正確化を推進できます。

2-4. ハサミを使わず手で簡単に開封できる

一包化の袋は、手で簡単に開封することができます。そのため、手が不自由な方や動かしにくい方の負担が少なく、快適に薬剤を服用できます。

2-5. PTPの誤飲を防止する

一包化 PTPシート誤飲防止

取り出されたPTPシート(※日本薬剤師会資料より)

例えば「1錠単位に切り離した薬を、PTP包装のまま飲み込んでしまった」といった事故が発生しています。PTP包装シートは、湿気や紫外線による薬の変質を防ぐものです。その材質はプラスティックやアルミでできています。

こういった場合、患者さん自身が自力で取り出すことはほぼ困難です。またX線写真に写りにくく、内視鏡で取り出すことになります。そのため、体への負担も大きくなります。こういったトラブルを防ぐため、高齢者や誤飲の可能性のある患者さんには、一包化による処方を検討することが推進されています。

 

3. 薬の一包化のデメリットとは

一包化のデメリット

3-1. お薬の受け渡しに時間がかかる

一包化の作業は、まずお薬を包装から全て取り出します。そして1つ1つを専門の機械で詰めていきます。こういった流れを経るために、どうしてもお薬の受け渡しに時間がかかってしまいます。待ち時間をなくすためには、予め予約しておくのが賢明です。

3-2. 薬剤の保存期間が短くなる

先述した通り、一包化の作業ではまずお薬を包装から取り出します。そのため、お薬がどうしても外気に触れてしまいます。その結果、未開封時よりも薬の保存期間が短くなってしまうという側面があります。

3-3. 個別のお薬の名前が分かりにくくなる

一包化する作業では、PTPやヒートから薬剤を取り出します。そのため見てすぐに何のお薬か、わからなくなる可能性があります。普段は、PTPの包装の色で判別している患者さんもいらっしゃるでしょう。しっかりとご自身で服用管理できる方は、一包化しない方が良い場合もあるでしょう。

 

4. 薬の一包化の流れ

4-1-1. 薬剤師への相談

一包化を検討する場合、まずは薬剤師に相談しましょう。相談内容としては、「理由」や「服用している薬の種類と量」、「アレルギーの有無」、「普段の服薬習慣」などがあります。その他に薬剤師に伝えたいことがあれば、しっかり伝えましょう。

4-1-2. 薬の処方内容の確認

お薬を一包化しても問題ないかどうか、処方内容を確認します。万が一問題がある場合は、処方医に確認する必要があります。例えば一包化に適さない薬としては、以下のようなものがあります。

薬の名前 適用される症状 適さない理由 
アスパラカリウム錠 低カリウム血症  湿気に弱い
エビリファイOD錠  統合失調症  湿気に弱い
キプレス錠 気管支喘息/アレルギー性鼻炎  湿気や光に弱い
グルコバイ  糖尿病  湿気に弱い
バファリン配合錠A81  心臓病  湿気に弱い

4-1-3. 調剤

一包化するための医薬品を、集めます。具体的には、処方箋に記載されている医薬品を棚から必要数だけ取り出して集めます。この時、「薬の種類」「重量」「数量」をしっかりと確認します。この作業を、「ピッキング」といいます。

またPTPシート(薬剤が個包装されているシート)から薬を取り出して、一包化用の袋に入れます。例えば錠剤が大きい場合や、複数種類の薬を一緒に服用する場合は、飲みやすいように工夫して一包化します。

4-1-4. 一包化の袋の準備をする

一包化用の袋には、「患者の名前」「薬剤名」「服用日」「服用時間」「薬剤の用法・用量」「注意事項」等が印字されます。近年はQRコード付きの一包化用の袋もあります。その場合、QRコードを読み込むことで、薬剤情報を確認することができます。

4-1-5. 一包化の作業をする

<分包機で行う場合>
袋に分けて袋詰めしてくれる分包機に、データ入力し印字します。例えばデータ入力項目には、「薬品名」や「分包パターン」、「用法」、「日数」などがあります。またPTPシートに入っている薬は、指で押して機械のマスに入れていきます。

<手作業で行う場合>
薬剤師が一つ一つ丁寧に薬を分包し、袋に印字します。

<色分け作業をする>
分包されたパックに色分けが必要な場合、色分けをします。例えば飲み間違いを防ぐために、「朝食後/黄色」「昼食後/赤色」「夕食後/青色」のようにパック上部にマジックで線を引きます。

<間違いがないか最終確認をする>
分包された薬が間違っていないかどうかの最終確認を行います。例えば作業書と処方内容や、使用された薬の種類、パックされた薬の内容などをチェックします。

4-1-6. 服薬指導

薬剤師は、一包化された薬の服用方法について、患者さんに説明します。具体的には、「一包化された薬の飲み方」や「薬の保管方法」、「飲み忘れや飲み間違いをした場合の対処法」などがあります。

4-1-7. お会計

一包化の費用は、薬の種類や量、一包化用の袋の種類などによって異なります。通常、1回あたり数百円から数千円程度です。また一包化は、健康保険で一部がまかなわれる場合があります。

 

5. 薬の一包化料金とは

薬の一包化料金

5-1. 薬の薬の一包化料金例

では薬の一包化料金には、どれぐらいの費用がかかるのでしょうか。以下は、保険が適用される場合の参考金額です。

条件 費用金額(目安)
 42日分以下の場合の一包化の参考料金  7日分ごとに340円(34点)
43日分以上の場合の一包化の参考料金  一律2400円(2400点)

5-2. 薬の薬の一包化費用シミュレーション

以下は、28日分を一包化した場合と、50日分の一包化した場合の費用シミュレーションです。

保険が適用されて、1~3割負担になります。あくまで目安としてお考え下さい。

シミュレーション 費用金額(目安)
28日分の一包化の参考料金  340円/週✕4週✕保険1割負担=136円
50日分の一包化の参考料金  一律2400円✕保険1割負担=240円

 

6. 一包化加算と算定要件について

2022年度の調剤報酬改定では、薬剤師の対物業務をより対人業務へ移行させるため、既存報酬の見直しが実施されました。それに伴い、算定要件として求められる業務も変わりました。ここでは、そのポイントを解説します。

6-1. 外来服薬支援料2について

今回新設された「外来服薬支援料2」は、従来の「一包化加算」がベースになっています。要件である日数や点数に変更はありません。ただし「必要な服薬指導を行う」という文言が追加されました。これらの算定要件に該当せず、服薬管理をしやすくするためだけの一包化は、保険適用外のサービスになり、自費負担になります。

6-1-1. 外来服薬支援料の見直し/改訂前

【調剤料:一包化加算】

イ 42日分以下の場合:投与日数が7又はその端数を増すごとに34点を加算して得た点数
ロ 43日分以上の場合:240点

2剤以上の内服薬又は1剤で3種類以上の内服薬を服用時点ごとに一包化を行った場合には、一包化加算として、当該内服薬の投与日数に応じ、所定点数に加算する

6-1-2. 外来服薬支援料の見直し/改訂後

【外来服薬支援料調剤料】外来服薬支援料調剤料2

イ 42日分以下の場合:投与日数が7又はその端数を増すごとに34点を加算して得た点数
ロ 43日分以上の場合:240点

多種類の薬剤を投与されている患者又は自ら被包を開いて薬剤を服用することが困難な患者に対し、当該薬剤を処方した保険医に当該薬剤の治療上の必要性及び服薬管理に係る支援の必要性の了解を得た上で、2剤以上の内服薬又は1剤で3種類以上の内服薬の服用時点ごとの一包化及び必要な服薬指導を行い、かつ、患者の服薬管理を支援した場合に、当該内服薬の投与日数に応じて算定する

6-2. 服用薬の一包化業務について

中央社会保険医療協議会の一包化に関する資料において、一包化が必要な患者像として以下の内容が掲載されています。

・錠剤等を直接の被包から取り出して服用することが困難な患者

また一包化した方がいい患者像は、以下の通りです。

・服薬コンプライアンス不良(飲み忘れ、飲み誤りなど)の疑いがある患者

上記の指摘から、医師の指示による一包化だけではなく、患者像を意識した取り組みが求められています。また留意点として、一包化して投薬するだけでは、患者の「薬識の低下」や「薬効や注意喚起の欠落」につながる可能性があります。そうならないために、薬学的管理や一包化に即した服薬指導の必要性が指摘されています。

 

7. 薬の一包化のまとめ

薬の一包化は、効率的な服用手法の一つといえます。

ただその運用において欠かせないのは、患者さんに対する服薬指導やフォローアップです。例えば、服用忘れを防ぐお薬カレンダーやお薬ケースなどとの併用も効果的です。

また介護者の方には、「外来服薬支援制度」を活用した「外来服薬支援」の活用も有効です。

このような便利なツールや制度を組み合わせることで、患者さんにとってより安心できるお薬の一包化が運用できます。

本サイトでは、分包機について『分包機とは?薬剤師がより患者さんと向き合う時間を作るために』で詳しく解説しています。こちらも参考にして下さい。

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