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薬不足とは?その原因や品不足の薬の代用品についても解説します

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薬不足

薬不足が、今深刻な問題になっています。その原因は、季節はずれのインフルエンザの流行とジェネリック医薬品の供給不足です。

2023年10月6日、日本医師会は医薬品不足の緊急調査結果を発表しました。それによると、約5,700の医療機関の74%が「薬局から在庫不足の連絡を受けたことがある」と回答しています。そして病院内で薬を出している約3,000の医療機関の90%が、「入手困難な医薬品がある」としています。

院外薬局から不足の連絡のあった医薬品は、計1,489品目ありました。その上位10品目中8品目は、せき止めと痰を切る薬が占めています。また、鉄欠乏性貧血に効く市販薬も不足しています。

本記事では、今話題の薬不足の現状や原因、今後について解説します。

 

1. 薬不足とは

薬不足

今起こっている薬不足は、どのレベルまで危機的な状況なのでしょうか。その状況や不足している薬について、解説します。

1-1. 薬局の薬不足の状況

日本医師会の緊急調査による在庫不足の医薬品には、どのようなものがあるのでしょうか。

上位10品目としては、1位がせき止めの「メジコン錠15㎎」で1,304件、2位がせき止め・たんを切る薬「アスベリン錠20」で687件、3位はせき止めの「フスコデ配合錠」で531件でした。また4位以下には、糖尿病薬の「トルリシティ皮下注0.75㎎アテオス」464件、せき止めの「アストミン錠10㎎」458件、たんを切る「ムコダイン錠500㎎」399件と続きます。

7位の「ムコダイン錠250㎎」と8位の「アスベリン錠10」も痰を切る薬です。9位に抗うつ薬の「トリプタノール錠10」が入り、10位はせき止めの「フスタゾール糖衣錠10㎎」でした。

このように上位品目の8割が、「せき止め」と「たんを切る薬」が占めています。これ以外に、「糖尿病薬」「抗うつ薬」「抗菌薬」「解熱剤」等が不足しています。

またNHK首都圏ナビによると、東京都西東京市の小田薬局では、17,000品目の医薬品のうち、300品目が不足しています。その割合は、約18%に達しています。例えば、「せき止め」「たん切り」「解熱心痛剤」の不足は深刻です。また「抗生物質の処方薬」も入手しずらくなっているとのことです。

ちなみに患者さんの処方箋に記された薬の在庫がない場合は、医師に相談し、他の薬に変更してもらっているそうです。

1-2. カロナール不足と代用品

カロナールとは、解熱・鎮痛に効くかぜ薬です。のどの炎症をおさえるイブプロフェンが、速く溶けるように工夫されています。しかも、子どもや妊婦などにも幅広く使えるという特徴があります。

カロナールと同じく、主成分がアセトアミノフェンの市販薬があります。例えば、「ラックル」「タイレノールA」「バファリンルナJ」「小児用バファリンCⅡ」などがあります。

1-3. ロキソニン不足と代用品

第一三共の解熱鎮痛薬「ロキソニン」は、非ステロイド性抗炎症薬です。このロキソニンという名前は、有効成分のロキソプロフェンナトリウムに由来しています。

この頭痛や生理痛に効くロキソニンの代用品としては、どんなものがあるのでしょうか。例えば、「コルゲンコーワ鎮痛解熱LXa」「バファリンEX」「エキセドリンLOX」などああります。

ロキソプロフェンナトリウムを使用した内服薬は、第1類医薬品です。なので、薬剤師が常駐している店舗で購入する必要があります。

1-4. カルボシステイン不足と代用品

カルボシステイン(ムコダイン)は、痰の切れを良くし、鼻汁を出しやすくしてくれます。また荒れた副鼻腔粘膜や気管支粘膜を治し、粘膜の抵抗力を高める効果があります。

1-4-1. 黄色い痰や激しいせきにおススメの市販薬

痰がのどに張り付く方には、杏林製薬の「クールワン去たんソフトカプセルRN 24カプセル」がおススメです。たんに特化された薬で、L-カルボシステインとブロムへキシン塩酸塩のみ配合されています。

1-4-2. 長引く痰におススメの市販薬

痰が長引く場合、風邪やアレルギー、たばこの炎症の可能性があります。ツムラ漢方の「麦門冬湯」は、痰がのどに張りついたり、乾燥したのどに張り付く痰に効果的です。

1-4-3. 透明な痰や鼻水におススメの市販薬

水様性の痰や鼻水は、冷えが原因と考えられます。冷えは、体内における水のめぐりが悪くなることで起こります。そういった症状には、ロート製薬の「小青竜湯」がおススメです。小青竜湯エキスやマオウ、シャクヤクなどが含まれる小青竜湯は、体を温めてくれます。また、アレルギーや風邪による水様性の鼻水や痰に効果的です。

 

2. ジェネリック不足について

薬不足

薬の不足の大きな原因には、ジェネリック不足があります。ここでは、ジェネリック医薬品の不足の現状と構造的原因、対処について解説します。

2-1. ジェネリック医薬品メーカーの不祥事について

現在、日本の薬の80%は、ジェネリック医薬品が占めています。しかしここ数年、ジェネリック医薬品メーカーの不祥事が相次ぎました。具体的には、2020年福井県の小林化工が水虫薬「イトラコナゾール錠」に、睡眠導入剤を混入させてしまうトラブルが発生しました。その結果、処方・調剤された患者さん344人中、245人から健康被害の報告が出ました。

また2021年3月、国内ジェネリック大手3社の1つである日医工が、富山県から業務停止命令を受けました。その理由は、不適合の錠剤を砕いて再加工したり、出荷前の一部の試験を実施していませんでした。

その後、「事前通告査察」から「無通告査察」に切り替えられたこともあり、相次いで不正が発覚しました。また日本ジェネリック製薬協会は、自主点検の結果、加盟38社中31社で国の承認書に記載のない製造手順などが見つかったと発表しました。

これらの不祥事が製造中止の事態を招き、供給不足の大きな原因になっています。

2-2. ジェネリックの増産が難しい理由とは

2-2-1. 9077品目の32.3%が限定出荷と供給停止

2023年8月に日本製薬団体連合会と厚生労働省が製造販売業者を対象に行った調査では、全体の32.3%が「限定出荷」と「供給停止」でした。この時の対象ジェネリック品目は、9,077品目です。

2-2-2. 2022年のジェネリックの数量シェアは80.7%

実は年間31兆円の日本の医療費は、先進国の中では最も低いです。対GDPに対する割合は7.9%で、米国は15%です。ただし超高齢化社会を迎えた日本では老人医療費の伸びが高く、医療費の削減が推進されています。

その中でも大手製薬メーカーの特許が切れ、同じ効能と安全性を維持しながら安く作れるジェネリックが重用されてきました。2023年6月29日、日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)は2022年度(22年4月~23年3月)のジェネリック医薬品の数量シェア(速報値)が80.7%だったと発表しました。

また国の「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太の方針2021)では、「2023年度末までに後発医薬品(ジェネリック)の数量シェアを、全ての都道府県で80%以上」という目標が掲げられています。

2-2-3. 価格競争と少量多品種生産に陥ったジェネリックメーカー

共同開発することで、十分な製造能力がない多くの企業が参入しました。その結果品目が増加し、製品の差別化が困難になり、価格競争に陥りました。

また多くのジェネリック製造メーカーが、「少量多品種生産」状態になりました。そして供給能力に余裕がなくなり、バックアップ体制が維持できなくなったのです。また長期間販売するジェネリック医薬品の赤字を、新規ジェネリックで穴埋めするスパイラルにも陥りました。

2-2-4. 委託製造の構造が安定供給のボトルネックに

2005年の薬事法の改正以降、ジェネリック市場への新規企業の参入が増加しました。その一方で、新薬系企業の撤退が相次ぎました。それを容易にしたのは、自前の設備を持たず、委託製造していたからです。

この外部への委託製造の構造が、薬の安定供給のリスクになりました。一旦品不足の事態が発生すると、生産設備に余裕のない委託製造メーカーへの発注が重複してしまうからです。

2-2-5. ドラッグストアのバイイングパワーと値引きの常態化

都市圏を中心に、ドラッグストアの出店攻勢が激しさを増しています。私達消費者にとっては、非常に便利な存在です。ところがドラッグストアは仕入れ力があり、値引き交渉力も強いのが現実です。

その結果薬価が下がり、「ドラッグロス」の原因になっているという指摘もあります。例えば、品薄になっているジェネリックには原価割れの品目も多く、生産中止による欠品リスクも懸念されています。

 

3. 薬不足の対策について

薬不足の対策

3-1. 相談窓口の設置と薬の処方短日化の通知

薬不足の対策として、厚生労働省は、薬が不足している薬局や医療機関向けに相談窓口を設けることを決定しました。そして在庫がある業者には販売を依頼しています。

また全国の医療団体に対し、薬の処方を最も短い日数にとどめる通知を出しています。そうすることで、限られた供給量の中で有効活用することに努めています。

3-2. ガイドライン強化に向けた検討を開始

医療用医薬品の流通の改善に関する懇談会というものがあります。2023年6月から、「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」の強化に向けての検討が始まりました。

ここでオーファンドラッグの増加や後発医薬品の浸透等、医薬品特性に応じた取引体系とする必要性を指摘する声が複数上がりました。

3-3. オーソライズド・ジェネリック(AG)の問題

オーソライズド・ジェネリック(AG)とは、「許諾を受けたジェネリック医薬品」です。例えば、有効成分や原薬、添加物や製法は、全て新薬と同じです。中には、製造工場や生産ラインが同じ場合もあります。

ただし、AGはジェネリックの健全な価格競争を阻害し、薬価を高止まりさせるリスクも指摘されています。

3-4. ジェネリック業界における再編の必要性

ジェネリック業界で長く議論されてきたテーマの一つが、業界再編です。先述した通り、生産余力のない企業が多く、集約化が進まない結果、急な増産ニーズに対する商品供給不足に陥っています。

GE薬協や後発医薬品使用促進ロードマップに関する調査報告書では、ジェネリック企業は約190社あります。そのうちの約150社は、承認品目は50品目以下です。さらに80社は、10品目以下という状況です。

一番の問題点は、「ジェネリック各企業の製品構成が似ており、再編ニーズがない」ことです。また新規ジェネリックを発売後に安売りを繰り返し、薬価改定後に供給量を減らして「売り逃げ」をする中小企業が多いことも、問題視されています。

それらの点を踏まえ、ジェネリック医薬品の品質と安定供給を確保するためには、今後の産業のあるべき方向性を示す必要性に迫られています。

 

4. まとめ

薬不足は、健康に直結するだけに、深刻な問題です。

特に複数の疾患をお持ちの高齢者の患者さんにとっては、自分にとって必要な薬が処方できなくなることは大きなリスクです。

薬全体の8割を占めるジェネリック医薬品は、従来医療費を削減する救世主として重用されてきました。

しかし、製造メーカーの不祥事による減産の影響を受け、今回の薬不足の主な原因になっています。

この薬メーカーの構造的な問題の解決と同時に、同じ薬成分による代用品の活用が更に進まざるを得ないでしょう。

今回の薬不足は、ある意味で、薬剤師の薬の成分に対する知見が試される事態ともいえるかも知れません。

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