2025年3月26日、日本チェーンドラッグストア協会は定例の会見を開きました。そこで、全国のドラッグストアの総売上が10兆円を超えたことが明らかになりました。この10兆円という数字は、協会が創立以来目標としてきたものです。しかも、1年前倒しで到達するという快挙でした。そのニュースについて、考察してみたいと思います。
1. 日本チェーンドラッグストア協会とは
一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は、全国のドラッグストアチェーンを中心とした企業が加盟している業界団体です。日本国内におけるドラッグストア業界の健全な発展と、地域社会の健康と生活を支える役割を果たすことを目的としています。概要を以下に記します。
JACDS概要
① 設立/1999年
② 本部所在地/東京都中央区
③ 会員企業数/80社以上(正会員、賛助会員含む)
④ 加盟店数/全国2万店以上
加盟企業は、ウェルシア薬局やスギ薬局、ツルハドラッグ、ココカラファインなどがあります。
2. 売上が10兆円を超えた理由とは
ではドラッグストアが、なぜここまで売上を伸ばすことができたのでしょうか。そのポイントを以下に解説します。
2-1. 消費者ニーズを捉えた品揃え
かつてドラッグストアは、医薬品や化粧品を中心に扱っていました。しかし現在は、米や冷凍食品、洗剤、ベビー用品、健康食品など幅広い商品を扱っています。現在のドラッグストアは、生活に密着した総合小売店です。スーパーやコンビニエンスストアの代替として利用されています。
2-2. コロナを機に向上したセルフメディエーション意識
2019年12月に発生した新型コロナウイルスの影響で、マスクや消毒剤の需要が急増しました。また風邪薬や解熱剤などのOTC医薬品の購入も増えています。各種サプリメントも人気です。このように、医師に頼らず自分で健康を管理するセルフメディケーションが普及しています。
2-3. スケールメリットの追求
ツルハやウェルシア、スギ薬局やマツモトキヨシは、地方にも店舗を拡大しています。そうすることで、郊外や地方都市に住む人々でも、気軽にドラッグストアを利用できるようになりました。またこれらの大手チェーンは、合併やM&Aを積極的に行っています。その結果経営効率を高めることができ、商品単価を下げることで消費者の心を掴んでいます。
2-4. PBブランド商品戦略とポイント制度
大量仕入れによる価格交渉力を生かした低価格戦略だけでなく、プライベートブランド商品の展開も大きな特徴です。例えば、マツモトキヨシは「matsukiyo」というプライベートブランドを展開しています。プライベートブランド商品の最大のメリットは、小売価格を下げれることです。その仕組みは、自社の企画開発と工場への委託製造で成り立っています。今やドラッグストアのチェーン店において、PBブランド商品は欠かせない存在になっています。
またポイント制度も、来店の動機付けに効果的です。既存顧客を囲い込むことを目的としており、ポイントには「独自ポイント」と「共通ポイント」の2種類があります。
3. 最後に
薬局業界におけるドラッグストアの存在感は、今後も拡大することが予想されます。それはかつて日本のどこにでもあった八百屋さんや肉屋さんが、スーパーマーケットの出店で消滅したシーンを想起させます。
一方で小・中規模の調剤薬局が生き残るにはどうしたらいいのでしょうか。ドラッグストアには調剤併設型もあり、調剤だけでは差別化しにくい局面に突入しています。だからこそ、薬剤師の専門知識を生かした患者さんとの関係構築が必要不可欠です。
厚生労働省が推進する「対物業務から対人業務」への転換は、大手ドラッグストアの強力なバイイングパワーに対抗する調剤薬局の方向性を示唆しているのかも知れません。
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